【火曜リポート】フェリー各社、減便や値上げ
中東情勢を受けた燃料価格の高騰で、短距離航路を持つフェリー会社を中心に減便や運賃値上げの動きが出ている。運航会社の中には燃料仕入れ単価が採算ラインの2倍を超える月もあるなど、かつてないコスト上昇が背景にある。燃料だけでなく、建造費やドック費用などもアップしている中、運賃改定を継続的な検討課題に挙げる長距離フェリー会社も多い。利用するトラック運送事業者にとっては、荷主への価格転嫁が一層重要になる。(土屋太朗、矢野孝明、吉田英行)
フェリーの減便や値上げは当然、利用するトラック運送事業者の負担が増え、利用減少につながりかねない。運送事業者側も、フェリーの利用を持続するには、荷主や元請けへの適正な転嫁が求められる。
瀬戸内海汽船(内堀達也社長、広島市南区)は広島港・呉港―松山観光港のフェリー航路を、通常は1日10往復のところ8往復に減便する臨時ダイヤで運航する。期間は、繁忙期に当たる8月の全日を除く6月22日~9月30日の平日で、従来は利用客が少なくトラックの定期乗船もない便を選んで運休する。
同社では「リーマン・ショック時を超え、過去に経験がないほど燃料価格が上昇しており、コスト対策として減便を決めた。運休による影響が最小限になるよう、船が点検整備でドック入りする時のダイヤを適用した」としている。
防予フェリー(五島匠社長、山口県柳井市)は、柳井港―松山三津浜港の運賃を8月1日に改定する。車両航送料は片道で6㍍未満が千円、6㍍以上は2千円、それぞれ値上げ。大型トラックが該当する12㍍未満の場合、片道、往復ともに現行より7・2%増となる。
五島社長は「重油価格急騰はかつてないほどのインパクトで、4月の燃料単価は自社で定める採算ラインの2倍を超えた。対策を打たなくては航路運営を継続できないと判断した」と説明。また、同航路はトラックの利用比率が高く「大口の顧客には個別に案内しながら、理解と協力を求めている」と話す。一方で「乗客の利便性を損なわないため、減便は現時点で行わない方針」という。
一方、山口県の徳山港と大分県の竹田津港を結ぶ航路を運営する周防灘フェリー(齋藤良二社長、山口県周南市)は6月の1カ月間、1日5往復のうち夜間の1往復を減便するとともに、運賃を1日に改定した。燃料価格の変動に応じて上乗せするBAF(燃料価格変動調整金)も、7月からはトラック・バスへの加算金を現行の1500円から1600円に引き上げる。
神奈川県横須賀市の久里浜港と千葉県富津市の金谷港を結ぶ東京湾フェリー(齊藤宏之社長、横須賀市)も「燃油価格をはじめ、潤滑油・ペイントのあらゆる物が高騰しており、大きな損失を見込んでいる。同業他社とも意見交換を行い、今後、BAFの導入を検討している」(営業部)と説明する。
BAFは、長距離航路を持つフェリー会社などでは一般的だが「当社航路は短距離航路であり、フェリーではなく東京湾アクアラインを使うという選択肢もあることを考えると、なかなか難しい決断だ。減便は2年前から行っており、これ以上は現在考えていない」(同)としている。
フェリー利用に積極的な四国の大手運送会社の社長は「重油価格はものすごく高騰していると聞いており、値上げや減便は仕方ない印象だ」と一定の理解を示す。一方で、価格転嫁については「あらゆる物が相次いで値上がりしており、その都度、荷主に交渉することは難しい。中東情勢は先が読めず、運送各社は困惑しているのではないか」とみている。
コストアップに揺らぐのは短距離航路のフェリー会社だけでなく、長距離フェリー会社も同様。長距離フェリー業界は、BAFで対応しているため、燃料価格の上昇を背景とした値上げは今のところ出ていないようだ。
ただ、燃料価格だけでなく、建造費やドック費、外部委託費など諸経費も高騰している。「ドック費は、前年と比べ2、3割アップしている」(商船三井さんふらわあの牛奥博俊社長)。こうした環境を踏まえ、運賃改定を継続的に検討する会社は多いとみられる。内航船舶業界への値上げの波は今後も広がりそうだ。


ニチレイロジグループのロジスティクス・ネットワーク(馬場園修三社長、東京都千代田区)は、冷食物流プラットフォームの強化・拡充を図る。MDC(マザーディストリビューションセンター)のスペースを拡張したほか、次世代輸配送システム「SULS(サルス)」を段階的に増強。MDCとSULSを連動させた施策も交えつつ、需要の拡大が続く冷凍食品物流の受け皿を担う。(澤田顕嗣)
MDCは消費地に近い低温倉庫(FDC=フロントディストリビューションセンター)を補完する役割を負う。首都圏の3カ所(千葉、神奈川、埼玉の各県)に設けているが、唯一の外部倉庫である埼玉県上里町に立地するMDCのスペースを1日から増強。大手冷食メーカーの業務を新たに受託したことに伴い、取り扱いが可能な数量を2万8千パレットに倍増させている。
今回の増床を弾みに関東エリアでの「3MDC構想」にギアを入れる。冷食メーカー3社の業務を請け負う埼玉県のMDCは、スペースに余裕があることからメーカー数社に利用を呼びかけているという。
関東エリアでは「3FDC構想」も推進しており、2027年12月に予定する埼玉県川越市の新拠点(保管能力2万1600㌧)が稼働すると、千葉県船橋市と川崎市川崎区に構える既設拠点を合わせた3FDCが具現化する。
冷食物流プラットフォームは他エリアへの展開も見据えている。冷食メーカーの成長戦略に支障を及ぼす庫腹不足が予測される中、西日本エリアでも複数メーカーの要請に応えるMDCの需要が見込めると認識。流通過程の上流にMDCを置くことで整流化を促進する方針の下、自動倉庫や移動ラックなどのマテハンが導入されているといった機能面、コスト面で条件の合う拠点の確保を検討している。
これ以外にも27年11月に稼働を予定する福岡市東区の自社アセット増設(2万8千㌧)を機に、同拠点を九州エリアのMDCと位置付けることも視野に入れる。
SULSはトレーラの増車とエリア拡大を進めており、トレーラは26年12月期に15台増やして74台へ引き上げ、27年12月期には計100台を目指す。東京から九州へ向かうルートでSULSのトレーラを活用したフェリー輸送を1月に開始しているほか、SULSを絡めてMDCから全国への共同輸送や近隣納品先への共同直送を行うなど、持続可能な輸配送基盤と位置付けるSULSを幹線と支線で段階的に強化する。
共同配送網については、アセットを含めた種々のリソースを確保する課題はあるものの、東北、九州、沖縄といった地方でも時間を費やしてネットワークを整備していきたい考えだ。
熊谷敦・専務執行役員ソリューション開発本部長兼営業開発部長は「28年1月から始まる次期中期経営計画の好発進につなげるためにも、今期は大事な1年になる。関東でのMDCの拡張と3FDC構想を前進させる点で、次のステージを見据えたターニングポイントの年となる。冷食物流プラットフォームの輪郭をより鮮明にするとともに、規模の拡大と基盤強化を一層図る」と話している。

地区宅便、自動倉庫システム稼働
セイノーホールディングス傘下の地区宅便(河合秀治社長、東京都練馬区)は7月14日、千葉市緑区の第2ロジスティクスセンターで、自動倉庫システムを稼働させる。保管密度が従来比3倍に高まるのに加え、ピッキング効率も4倍になる。多品種・小口化が進むEC(電子商取引)貨物の作業効率を上げ、労働力不足に対応するとともに、取扱量の拡大につなげる。
6月16日、運用開始に向けた記念式典を開いた。
導入するのは、ROMS(前野洋介社長、品川区)の「ナノ・ストリーム」。庫内の200平方㍍部分に2880コンテナを保管する12段のラックを設けた。ロボット12台とクレーン4基を活用し、ピッキング作業の自動化を実現する。作業者の歩いたり、探したりする手間をなくし、作業効率は4倍に高まるという。
従来は倉庫の天井高4・9㍍に対して2㍍の棚を使用していた。一方、ナノ・ストリームの高さは4・7㍍で、空いていた空間を有効活用することで保管密度が3倍に向上。保管スペースが広がったことで、今後はさらなる自動倉庫システムの導入も検討する。
地区宅便は主に東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を配送エリアに、ポストに投函するダイレクトメールやEC貨物の取り扱いを得意とする。EC貨物は多品種・小口化が進み、労働力不足の中で作業効率の向上が課題だった。
効率化を積極的に進めていく上で、小規模スペースでも設置できるナノ・ストリームの導入を決めた。今後は、動画配信者が生ライブでPRする商品を視聴者が購入する「ライブコマース」の物流需要の取り込みを推進するなど、EC貨物の取り扱いを一層広げる。
式典で、河合社長は「人材採用はより難しくなっていく。既存のオペレーションにテクノロジーをいかに組み込むかが最大のポイント」と強調。ROMSの前野社長は「当社はメーカーだが、導入企業に伴走していくのがポリシー。納品して終わりでなく、始まりだ」と述べた。(土屋太朗)
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