【火曜リポート】JR室蘭線運休で貨物列車ストップ、農家・通運業者の影響大きく
JR北海道は、8月下旬の豪雨で土砂が流入するなどして運休していた室蘭線の運転を9月10日から再開した。復旧までの約2週間、貨物列車もストップし、道内や本州との物流に混乱が生じた。タマネギなど農産物の出荷時期を迎え、例年と比べて豊作となっているが、出荷量や輸送量が「3割減った」とする声も上がっており、生産農家や通運事業者への影響は大きい。(特別取材班)
札幌管区気象台によると、8月27、28の両日は道内で大気の状態が不安定になり、広い地域で大雨が降った。
JR北海道では27日、室蘭線の有珠駅(伊達市)―長和駅(同)で、線路に流れ込んだ倒木と回送列車が衝突し脱線。静狩駅(長万部町)―小幌駅(豊浦町)でも土砂の流入や線路冠水、路盤の流出といった被害が出た。これを受け、室蘭線を通り札幌市と函館市を結ぶ「特急北斗」が運休。長万部町―伊達市などで普通列車も複数休止した。復旧工事が完了した区間から運行を再開し、一部徐行区間を含むものの9月10日に全線が通れるようになった。
JR貨物も室蘭線、函館線で貨物列車の運転を見合わせた。道外と接続する函館貨物駅(函館市)と、道内の鉄道貨物輸送の中心である札幌貨物ターミナル駅(札幌市白石区)との鉄路が2週間にわたり分断されることとなった。
対応として、本州―函館貨物駅で折り返し列車を運転。函館貨物駅―札幌貨物ターミナル駅ではトラックによる代行輸送を行った。また、苫小牧港(苫小牧市)発を9月2日、青森港(青森市)発を4日として、船舶での代行輸送もそれぞれ1往復実施した。
貨物列車も10日には運転を再開したが、室蘭線の小幌駅―静狩駅の上下線と有珠駅―長和駅の下り線の一部区間は当面、徐行運転となる。
農産物の収穫や出荷が本格化する中、影響は各地に及んだ。
オホーツク地域から北旭川駅(旭川市)までの臨時貨物列車「タマネギ列車」にも運休が出た。ホクレン農業協同組合連合会(篠原末治会長)北見支所では、トレーラと船舶での輸送を増やして対応した。繁忙期の中、遠方の苫小牧港まで向かったり、九州に出荷したりするケースもあり、車両の確保に追われた。きたみらい農業協同組合(JAきたみらい、大坪広則理事長)も一時はタマネギの出荷量が例年から3割落ち込むなど影響を受けた。
タマネギの輸送を主力にする北見通運(舛川誠社長、北見市)では、鉄道の運行停止で出荷が止まったことに伴い、輸送量が3割ほど減少した。舛川実副社長は「2026年は生産が順調で、輸送量の増加を期待していただけに、つまずいた形」と話す。トラックによる代行や船舶の活用でカバーしたものの、「船舶では枠が既に決まっているため、思い通りにさばけない」としている。
旭川通運(西村仁社長、旭川市)も、農産物や札幌貨物ターミナル駅の到着貨物の輸送など、複数の仕事がキャンセルになった。空いた車両は他の集荷の応援に回したほか、JR貨物の代行輸送も担当したが、多くの稼働を失うことになった。
猪上靖浩専務は「今年は農産物の出来が良く、期待していただけに残念。鉄道貨物輸送は『2024年問題』対策やコスト削減といったメリットはあるものの、今回のように悪天候時の輸送障害を懸念する荷主もいる」と説明。「やむを得ない部分もあるが、復旧のメドを早期に示せるようにする、代行輸送の体制を平時から整えておくといった対応を求めたい。通運事業者としても、複数の輸送手段を確保しておく必要があるだろう」としている。
また、富良野通運(永吉大介社長、富良野市)は、フェリー航路による有人輸送に対応した「本州リンク事業部」を立ち上げ、輸送障害などへの対策を進めていた。今回は協力会社とも連携し対応したが、運びきれなかった貨物も多い。永吉社長によると、出荷先を本州から道内市場に変更した農家もあった。
一方、ブロッコリーなど鮮度の落ちやすい青果物も貨物列車で運ばれており、「農家側はどこにも出荷できず廃棄するか、高い輸送コストをかけてトラックを手配し赤字覚悟で出荷するかという、厳しい2択を迫られることになる」という。永吉氏は「輸送力強靭(きょうじん)化について、国全体の問題として検討してほしい」と訴える。


T2「モーダルコンビネーション」、往路と復路分け共同輸送
T2(熊部雅友社長兼CEO=最高経営責任者、東京都千代田区)の自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせて輸送する「モーダルコンビネーション」が、前進した。関東と中国エリア間で、複数企業の製品を往路と復路に分けて共同輸送する初の試みを8~11日に実施。東海地方で8日に発生した豪雨によりルートの一部でJR貨物の列車を利用できなくなったがトレーラで、急きょ代替運行した。復路荷主の出荷場所に定刻で到着し、貨物鉄道の自然災害リスクを回避できることを実証した。一方で、課題も抽出できた。(矢野孝明)
今回の実証は、T2とエスビー食品、オタフクソース(佐々木孝富社長、広島市西区)、両社の輸送を受託するエバラ物流(由田靖尚社長、横浜市西区)が参画し、関東-中国エリアの850㌔区間で実施。T2とJR貨物が共同開発した31?共用コンテナを使用した。
往路では、エスビー食品の物流センター(埼玉県川越市)からエバラ物流の関西第2物流センター(大阪府東大阪市)までをT2のレベル2(L2、特定条件下での自動運転機能)トラックで輸送。その後、吹田貨物ターミナル駅(吹田市)から広島貨物ターミナル駅(広島市南区)までJR貨物の貨物列車で空の共用コンテナを回送した後、オタフクソースの本社工場(西区)まで別のトレーラで輸送する計画だった。
しかし、東海地方が8日に記録的豪雨に見舞われた影響で、9日に利用する予定だった吹田貨タ駅から広島貨タ駅までの貨物列車が運休。そのため、T2がトレーラを急きょ手配し、共用コンテナを代替輸送した。
復路は、オタフクソースで積み込んだ商品を広島貨タ駅まで輸送した後、同駅から吹田貨タ駅までを貨物列車で運び、エバラ物流の川崎物流センター(川崎市川崎区)までL2トラックでつないだ。なお、自動運転区間は往復路ともに東名高速道路・綾瀬スマートインターチェンジ(神奈川県綾瀬市)-名神高速道路・久御山ジャンクション(京都府久御山町)の410㌔で行った。
モーダルコンビネーションは、トラックドライバー不足が深刻化する中、T2とJR貨物などが2025年夏に実証を開始。今回が5例目で、複数の企業の荷物を往路・復路で分けて運ぶのは初めて。
オタフクソースSCM部の小田孝広部長は「ドライバー不足で輸送能力が低下する中、物流を持続させる根本的な解決策の一つとして、モーダルコンビネーションをどう活用できるかトライアルした。リードタイムなど従来の輸送手段に劣らない」と説明する。
T2ソリューション企画部の五十嵐誠担当部長は、オタフクソースで共用コンテナの発着を見届け「鉄道輸送のリスクを臨機応変に乗り越え、物流を止めないことを実証できた」と強調。BCP(事業継続計画)としての有効性にも手応えを感じていた。
一方、複数の荷主で往復するモーダルコンビネーションには、コスト面に加えて別の課題もある。今回の実証では、貨物鉄道の往路区間は空荷だ。
小田氏は「実証を繰り返すことで他の荷主にも波及すれば、費用は下がると期待している。ただ、東から広島方面に下る荷物が少ないのが実情で、工夫してうまくマッチングさせる必要がある」と話している。

国交省、高速道逆走総力戦で対策
国土交通省は、高速道路での逆走対策を実施しているにもかかわらず事故、案件ともに増加し、逆走の動機、年代、要因などの傾向が変化してきたことを受け、道路インフラ、車両、交通安全、運転者教育、広報・啓発など総力戦で対策を強化していく。(田中信也)
9日の逆走対策の有識者委員会(大口敬委員長、東京大学教授)の会合で、逆走事案・事故の発生状況や、逆走対策の進ちょくについて、道路局の担当官が報告。新たな取り組みも含めた対策の方向性について討議した。
逆走事案は毎年200件ほど発生しているが、2025年は297件と11年以降で最多。事案のうち事故に至ったのは毎年40件程度だが、25年は64件と、これも11年以降で最多となった。
25年の逆走事案・事故の発生状況を分析すると、65歳未満が4割を占め、11~24年の3割から増加した。動機別では、故意が3割と11年以降の2割から増え、要因別は「道間違いが発端」が11年以降の5割から6割に上昇している。
突出した逆走事案・事故の増加と「故意、65歳未満、道間違い」などが増加した25年の傾向を踏まえ、大口委員長は「道路での対策だけで対処できるものではなく、総力戦で取り組む必要がある」と強調。一方、傾向の変化に関しては「統計上の問題があるかもしれない」とした上で、さまざまな角度から課題を分析する必要性に言及した。
逆走対策に関しては、14年から全ての高速道路のインターチェンジ(IC)などで「矢印路面表示」といった全国統一の基本的対策を開始。25年12月末時点で99・8%が完了したことから、対策の強化を必要とする「重点対策箇所」として全国188施設を選定。これまでの公募で効果が確認された逆走情報収集、車載機器による注意喚起の技術も活用し、さらなる対策を講じる。
追加重点箇所は今冬に高速道路各社が実施計画を公表し、対策に着手。28年度内に対策を完了させ、成果を踏まえて「逆走データ(仮称)」を構築し、予防的な対策につなげていく構想だ。
また、過去の公募技術に関しては、26年度中に検証結果を整理してカタログ化する。さらに、高速道路3社が24年12月に新技術を公募し、選定した「道路管理用カメラによる逆走検知・警告技術」17件、「車載器逆走検知・警告技術」2件で実証実験をそれぞれ開始しており、技術の評価を受け、27年以降にカタログ化。既存技術も含めて特性を比較した上で水平展開していく。
このほか、高速道路会社による広報・啓発活動を紹介。国交省物流・自動車局は、車両に装備する「道路標識注意喚起装置」について、自動車アセスメントでの情報提供を24年度から開始したことを説明した。警察庁は誤進入防止のための交通安全対策、事故・事件捜査、運転者教育などの取り組みを報告した。
委員からは、特殊な事案についての詳細な分析や、カーナビゲーションシステム、ETCなどの車載器による効果と弊害の把握、音声による警告の重要性の指摘などが意見として上がった。
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