【金曜リポート】道内ビート輸送、中間受け入れ場や設備見直し
道内農水産物の主力の一つで、砂糖の原料となるてん菜(ビート)は10月に収穫・輸送の時期を迎えるが、物流の面では、製糖工場までビートを運ぶダンプトラックのドライバー不足や、短期間に輸送が集中することなどが課題となる。畑からの中間受け入れ場の整備や製糖工場の設備の見直し、輸送期間の延長など、荷主・運送事業者の双方で対応が進んでいる。(朽木崇洋、高清水彩、土屋太朗)
農林水産省の作物統計調査によると、2025年のビートの収穫量は319万5千㌧で、全て道内産。産地の畑から製糖工場まで主にダンプで運ばれている。ドライバー不足や時間外労働の規制強化により、広大な北海道では輸送力維持が重要な課題だ。10月からの1、2カ月間に輸送が集中することも車両の確保を難しくしている。
こうした中、ホクレン農業協同組合連合会(篠原末治会長)は受け入れ体制の改善を続けてきた。清水製糖工場(清水町)向けに士幌町に、中斜里製糖工場(斜里町)へは大空町と網走市に、それぞれ遠隔地の畑から運ばれてきたビートを仮置きする中間受け入れ場を設けている。ドライバー1人当たりの運転時間・距離を短縮し、効率化につなげる。広い場所で仮置きして順次出荷するため、運ぶ時期を分散できる、製糖工場まで大型トレーラで運べるといったメリットもある。
工場では車両を傾けて荷降ろしできるカーダンパー装置を活用。清水製糖工場で05年から、中斜里製糖工場は24年から稼働させている。ダンプアップできない平ボディー車やトレーラなどでも搬入でき、幅広い車両を使えるようになった。
集荷しやすいよう、生産者には、あらかじめ堆積場にビートを集めておいてもらうなど協力を求めている。てん菜事業本部てん菜生産部原料課の久保田俊課長は「ビートの輸送は10~11月半ばの1カ月前後がピーク。収穫が早すぎると十分な糖度に育たないという事情もあり、輸送期間とのバランスが重要になる。ドライバーの皆さんに気持ちよく働いてもらえるようにしていきたい」と話す。
運送事業者側の対応も進む。十勝鉄道(今木浩社長、帯広市)は、十勝管内をはじめ道内各地で収穫されたビートを日本甜菜製糖(日甜)の芽室町、士別市、美幌町の製糖所へ輸送している。
25年度の輸送量は148万㌧。収穫期の10月中旬から12月下旬までの短期間に輸送が集中し、ピーク時には1日300台を超える車両が必要となる。ドライバー不足や「2024年問題」への対応が求められる中、輸送量の平準化と車両確保が課題だった。
このため、日甜や生産者と協議を重ね、工場の受け入れ開始時期を10月上旬に前倒しし、終了も可能な限り年末まで延長。輸送期間を拡大することで、ピーク時の稼働車両を抑え、安定した輸送体制の構築を図っている。
通常積載量のダンプから大型のトレーラへの切り替えも推進。車両の大型化に伴い、21年にはビートを除土・堆積する大型車対応の自走式ビートバイラー(てん菜除土堆積機)を芽室製糖所に導入し、荷降ろし設備のない大型車両でも運用できる体制を整備した。
また、地域ごとに輸送休止日を設け、各協力会社の判断に委ねられていた休日取得を計画的に行える体制を構築。さらに、生産者の協力の下、1戸当たりの出荷回数を4回程度から2回程度に減らすほか、ビートを保管する土場を拡張するなどの対策も進めている。
こうした取り組みにより、ピーク時の1日当たりの輸送車両は300台超から240台程度まで減少。大型車両の割合も22年の41%から25年には48%まで上昇し、輸送効率の向上につながった。
今木社長は「ドライバー不足は運送会社だけの問題ではなく、荷主や生産者も含めた業界全体で持続可能な輸送体制を構築する必要がある」と強調。その上で「今後も安定した輸送力を確保するため、工場の受入期間のさらなる延長や施設の大型化について協議を進めていきたい」と話している。
北海道トラック協会(松橋謙一会長)も、農産部会のビート輸送分科会(古村祐一分科会長)で、必要な車両数の見通しや前年度の生産実績などについて協議している。従来は例年9月頃にこうした会合を行っていたが、25年度からは6月に前倒しし、いち早く情報を共有できるようにした。
ビート輸送に携わる団体・事業者からも、改善を実感する声が出ている。
メック大雪(旭川市)の田中紀幸社長によると、ビートを積み込んだ後に必要だったシート掛け作業を省略する動きが広がっており、田中氏は「作業時の負担やリスクがなくなり、非常にありがたい」と話す。運賃や1日の回転数・運転時間の見直し、輸送期間の前倒し、工場での受け入れ時間の調整も進んでいるという。
ビートの輸送請負が主力の網走地区貨物運送事業協同組合(中田尊徳理事長)の馬場正人専務は「近年の運賃改定で車両が集まりやすくなった。カーダンパーの導入で、使用する車両の選択肢が増えたことも大きい」と話す。今後の課題として、畑での土場(ストックポイント)のさらなる整備を挙げ「車両が入りやすい場所につくり、ビートを置いてもらうことで積み込みが楽になる」としている。
砂糖の原料であるビートの輸送の維持は、食に関わる産業全体に影響する。今後もサプライチェーン(供給網)全体での取り組みが求められる。


エスビー食品、オタフクソース(佐々木孝富社長、広島市西区)、エバラ物流(由田靖尚社長、横浜市西区)、T2(熊部雅友社長兼CEO=最高経営責任者、東京都千代田区)は3日、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせて輸送する「モーダルコンビネーション」の実証を関東と中国のエリア間で実施する、と発表した。複数の企業の製品を往路・復路で分けて共同輸送を行い、トラックドライバー不足に対応できる効率的な輸送モデルが実現可能かを検証する。
モーダルコンビネーションは、トラック、鉄道、船舶、航空機など複数の輸送手段を組み合わせ、持続可能な物流を実現する輸送方式。トラックドライバー不足が深刻化する中、T2とJR貨物などが2025年から実証を進めている。
今回の実証では、エスビー食品とオタフクソース、両社の輸送を受託するエバラ物流が新たに参画し、今月8~11日に関東-中国エリアの850㌔区間で実施する。T2とJR貨物が共同開発した31?共用コンテナを使用し、往路はエスビー食品が関東エリアで製造している「赤缶カレー粉」「本生本わさび」などの商品を、復路はオタフクソースの「お好みソース500g」をそれぞれ輸送。輸送品質やオペレーションについて検証する。
往路では、エスビー食品の物流センター(埼玉県川越市)からエバラ物流の関西第2物流センター(大阪府東大阪市)までをT2のレベル2(L2、特定条件下での高機能自動運転機能)のトラックで運ぶ。その後、吹田貨物ターミナル駅(吹田市)から広島貨物タ-ミナル駅(広島市南区)までJR貨物の貨物列車で空の共用コンテナを回送した後、オタフクソースの本社工場(西区)まで通常のトラックで輸送する。
復路は、オタフクソースの本社工場で共用コンテナに荷物を積み、広島貨タ駅まで通常のトラックで運ぶ。同駅から吹田貨タ駅までを貨物列車、エバラ物流の川崎物流センター(川崎市川崎区)までL2トラックで輸送する。なお、自動運転区間は往復路ともに東名高速道路・綾瀬スマートインターチェンジ(神奈川県綾瀬市)-名神高速道路・久御山ジャンクション(京都府久御山町)の410㌔で行う。
実証を契機に、エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流は、レベル4(特定条件下での完全自動運転)を見据えて実証を重ね、T2による商用運行への参画も視野に連携を深めていく。
(田中信也)

青果物物流DX推進協議会(中嶋剛登会長)は、キャベツやレタスなどの青果物物流の在り方を見直し、冷蔵技術の高度化、データ連携といったDX(デジタルトランスフォーメーション)により、JA(農協)や地方自治体と協力しながら、労働時間の短縮、属人化の解消など業務体制の改善で成果を上げている。現場が抱える見えない問題から構造的課題までを可視化し、物流業界全体で解決に向けた訴求力を高めるため、さらに実証実験を積み重ねている。(糸数佳音)
現場ではいまだに紙伝票で情報共有しているところが多く、長年の慣習が業務効率化の大きな妨げとなっている。さらに、各社が導入するシステムに互換性がないことも障壁となり、労働時間の増加や業務の二度手間につながっている。
こうした課題の解消に向け、システムエンジニア出身の中嶋会長が青果物物流を構造から変えるための仕組み「ベジロジシステム」を考案。取り組みを広めようと、同協議会を2023年に設立した。
中嶋氏は、当日出荷から鮮度を維持したまま届ける「翌日出荷」に切り替え、店頭に並ぶまでの全業務を効率化するため、同システムを構築。トラック庫内のエアフローや保冷機能を改善した「ベジロジトラック」と、霜を発生させずに湿度をほぼ100%で維持できる「ベジロジ倉庫」により、鮮度を保ちながらの仕分け・保管・輸送を実現した。同トラックは、現在も改良中で、人工衛星に使用される緩衝材を用い、庫内の保冷機能の向上を図る。
しかし、中嶋氏は「従来では当たり前の『当日出荷』の問題が解決しても、情報システムなどを生かして業務体系を改善しない限り、必ずどこかにしわ寄せがいくだけで、本来目指す改善はできない」と強調する。業界全体の改善を目指し、賛同者を増やすためにも実証実験を積み重ねる。
3月には、日本貨物運送協同組合連合会(御手洗安会長)と協力し、淡路島でレタスや白菜などの野菜の輸送実験を実施。出荷先としてセントライ青果(愛知県豊山町)と横浜丸中青果(横浜市神奈川区)が、運送事業者として西住運輸(兵庫県南あわじ市)など3社が参加した。積み込み指示書の受領から検品完了の確認までのデータを一律で管理することで、労働時間を大きく削減できた。JAあわじ島は出荷予定データの事前調整・提供を、運送事業者はスマートフォン携行とアプリの操作でそれぞれ協力。従来の平均作業時間から30分減の140分で完了した。1カ月当たりに換算すると、11~13時間の削減効果になる。
また8月には、沖縄へ高鮮度の青果物を輸送するための実証実験も開始。ベジロジトラックで検証中の緩衝材で、店頭まで収穫時の鮮度を保てるかどうかを確かめている。「沖縄では傷んだ野菜が定価でスーパーに並ぶのが当たり前。農家さんが自信を持って出荷した、おいしい野菜を届けたい」と中嶋氏は語る。
同協議会は、業界での訴求力をつけるため、今後も実証実験を重ねていく。「物流に関わる全ての人がメリットを享受できるよう、取り組みを進めたい。業界の構造的課題に対しても、積極的に働きかける」と中嶋氏は強い意志を示す。
ベジロジ倉庫を導入したことについて、高原野菜などを生産・販売する信州森のファーム(長野県南牧村)の菊池千春代表は「どこに持っていっても、一番の鮮度。新鮮な野菜を届けるためには欠かせない」と実力を評価している。
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