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政治・行政

熊本で震度7、九州の大動脈寸断

7月28日午後4時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする地震で宇城市と氷川町で最大震度7を観測し、県内の運送事業者では物流センターの被害や配送計画に影響を及ぼした。九州自動車道や南九州自動車道は損傷により、30日時点で通行止め解除の見通しが立たず、九州を南北に結ぶ大動脈が寸断されている。酷暑日に迫る気温の中、緊急物資輸送が開始され、国や自治体との連携の下、復旧・復興に向けた迅速な対応が求められている。(特別取材班)
地震の影響で、九州道・益城熊本空港インターチェンジ(IC)-えびのICの10区間、南九州道・八代ジャンクション(JCT)-水俣ICの6区間、九州中央自動車道・嘉島JCT-小池高山ICの1区間で道路損壊・橋りょう破損が発生。国道4区間でも橋りょうが損傷した。30日午前10時時点で九州道・松橋IC-えびのICの上下線、南九州道・八代ジャンクション(JCT)-水俣ICの上下線で通行止めが続いている。
城東運輸倉庫(下川公一郎社長、熊本県大津町)と城東物流システム(同)で構成する城東運輸倉庫グループの井上淳常務は「南九州道が通行止めとなり、鹿児島県を往復する輸送は下道を走るなど大きくう回せざるを得ない。復旧まで数カ月はかかるようだ。荷主企業に協力を仰ぎながら乗り切りたい」と切迫した状況を明かした。
熊本交通運輸(住永富司社長、益城町)の吉川誠常務も「高速道路の寸断で運行計画の見直しを急いでいる。荷主企業の理解を得て、物流への影響を最小限に食い止めたい」と話す。
震度6強の揺れを観測した八代市では、海岸付近や用水路、河川に架かる道路の地盤が隆起し、橋の取り付け部分に段差が生じている。八代港につながる横江大橋は橋脚が変形して通行止めになり、河川沿いにう回する車による渋滞も発生した。
熊本交通運輸では、八代市や益城町など県内数カ所で稼働する大型物流センターで荷崩れが発生し、夜通しで対応に当たった。
八代市に拠点を置く熊本県トラック協会城南支部(富田康方支部長)の吉住潔事務局長は「市内は電気、水道、ガスが遮断された。エアコンが使えない中での復旧作業は熱中症になる恐れもある」と不安を隠せない。
ガソリンスタンドにも影響が出ている。熊本輸送団地協同組合(永井正人理事長)が運営する益城給油所(益城町)では、一般車が長蛇の列となり、28日は夜遅くまで営業が続いた。しかし、29日からタンクローリー車が来ず、一般車の給油を中止。組合員向けのインタンク(軽油)は給油しているが、一般車向けの給油再開は不透明だという。
島原港(長崎県島原市)と熊本港を結ぶ熊本フェリー(井手雅夫社長、熊本市西区)は、地震の影響による船体修理のため、29日は終日欠航。30日に運航を再開したが、熊本港の乗船口の復旧が完了しておらず、車両での乗船に限定している。
熊本県は半導体に関連した工場の集積地であり、地震の揺れの影響が大きかった地域で工場の稼働停止が相次いだ。ルネサスエレクトロニクスは、震源地付近の川尻工場(熊本市南区)と錦工場(錦町)の操業を停止した。地震の影響で、川尻工場では壁面の亀裂や一部漏水、錦工場では天井パネルの落下や壁面のひび割れが確認された。
半導体製造装置の開発・組み立てなどを行う東京エレクトロン九州(林伸一社長、合志市)は、28日に合志事業所(同)、大津事業所(大津町)の稼働を停止。安全が確認できたとして8月3日からの再開を目指し、復旧を進めている。
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、子会社のJASMの第2工場(菊陽町)の建設現場は影響を受けておらず、7月29日に工事を再開した、と伝えた。
地震の発生を受け、国土交通省は28日に非常災害対策本部を設置。状況の変化を踏まえ随時会合を開き、関係部局が道路、鉄道、港湾、空港、物流などの施設の被災・対応状況を報告している。
ヤマト運輸(阿波誠一社長、東京都中央区)は一時、熊本県全域でドライバーによる集配を停止し、荷物の引き取りのみ対応。30日午前9時時点でも八代市など一部地域で集配を停止している。佐川急便(笹森公彰社長、京都市南区)は熊本市南区の一部、八代、宇土、宇城の各市などで集荷・配達を停止した(29日午後4時時点)。日本郵便(小池信也社長、東京都千代田区)は一時、県全域に発着するゆうパック、ゆうパケット、ゆうメールの引き受けを停止。30日午前9時時点でも八代市、益城町などで停止が続いている。
JR貨物では、八代駅(八代市)構内で機関車1両と貨車4両が横転、貨車1台が脱線した。積載物は紙と工業用純水だという。30日午後2時30分時点で、鹿児島線は熊本駅(熊本市西区)-八代駅、川内駅(鹿児島県薩摩川内市)―鹿児島貨物ターミナル駅(鹿児島市)、肥薩おれんじ鉄道線は川内駅―八代駅で運転を見合わせている。全国通運連盟(齋藤充会長)は29日午前10時から全国の通運関係者の会議を開催し、JR九州が熊本駅-川内駅でレール状態の点検作業に入ったことを報告した。
気象庁は今回の地震を「令和8年熊本地震」と命名。震源地が熊本県熊本地方で、震源の深さは16㌔、地震の規模を示すマグニチュードは7・1と推定される。
県の発表によると、30日午前7時30分時点での死傷者は86人。
熊本県トラック協会(下川公一郎会長)は、28日午後4時27分に緊急対策本部を設置。県からの要請を受け、29日に緊急物資の輸送を開始した。県庁(熊本市中央区)から宇城市、氷川町などへ飲料水やスポットクーラーを運んだほか、グランメッセ熊本(益城町)を受け入れ拠点としてパンなどを順次配送した。
30日時点で、全日本トラック協会(寺岡洋一会長)では対策本部を立ち上げていないものの、都道府県トラック協会では自治体からの要請を受け、物資輸送を開始したところもある。
国交省は、被災地の早期復旧や物流確保などの観点から、災害復旧に必要な機材の運搬、物資輸送を支援するため、特殊車両通行許可申請を最優先で処理し、許可証を交付する。現在、九州地方整備局の熊本河川国道事務所では申請を受け付けていないため、福岡、鹿児島など他の河川国道事務所で対応している。
また、港湾の広域ネットワークを活用した被災地への支援物資輸送として、大型浚渫(しゅんせつ)兼油回収船2隻による支援を実施。29日に名古屋港から清龍丸、新潟港から白山が出航し、それぞれ31日、8月1日に熊本方面に到着後、飲料水や食料、タオル、医薬品、衛生用品などを届ける。堺泉北港堺2区基幹的防災拠点からは支援物資や投光器などを運搬する。
震度7の地震が熊本県を襲ったのは、2016年4月以来。復興への歩みを続けていただけに、地元の運送事業者からは「またか」「10年前の恐怖が重なる。また大きな揺れが来るのでは」と不安の声がある。
熊ト協では、地震発生直後からホームページで会員事業所に人的被害、安否確認を最優先に情報収集を実施。国、自治体と連携して情報発信の一元化、広域的な視点による緊急物資輸送体制の構築など重要とされる初動対応に乗り出し、地方災害対策本部の設置や緊急物資輸送の拠点整備など被災地の支援態勢の構築を進めている。緊急物資輸送に当たる職員は「国や自治体との連携を取りながら、スムーズに被災地に物資を届けるためにも初動が一番大事だ」と語る。

国土交通省は7月31日、群馬県伊勢崎市で2024年に発生した大型トラックによる、乗用車の家族3人が死亡した衝突事故について、発生原因、再発防止策を提示した。トラックドライバーが始業点呼時のアルコール検査で検出されないよう点呼後に飲酒し、感情をコントロールできなかったことなどが要因と分析。トラック運送事業者に対し、安全優先・法令順守の姿勢を社内全体に示せず、指導監督も適正に行われなかったことを指摘した。その上で、飲酒運転をさせない企業風土の構築、正確な情報の理解などを求めた。(田中信也)
同日、事業用自動車事故調査委員会(吉田裕委員長、関西大学教授)の特別重要調査対象の報告書として公表した。吉田氏は「3人の命が一瞬にして奪われた大変痛ましい事故。遺族の知りたいことを少しでも解明したいとの思いで取りまとめた」としている。
24年5月6日の午後4時15分ごろに、伊勢崎市の国道17号上武道路で発生。両毛運輸(上田浩之社長、前橋市)の大型トラックが法定速度(60㌔)を大幅に超える時速90㌔で走行中、中央分離帯に右前輪を接触させて乗り越え、対向車線の乗用車と正面衝突し、その後方の乗用車にも衝突した。
これにより、最初に衝突した乗用車の3人全員が死亡し、後方の乗用車のドライバーが軽傷を負った。大型トラックのドライバーからは基準値を超えるアルコールが検出された。
報告書では、ドライブレコーダーの映像から、アルコールの影響により感情をコントロールできず、急に前方に割り込んだ車両に憤慨し、別の車両を割り込んだ車両と誤認。90㌔を超える高速でハンドルを右に操作したことで、車両の制御を失い、中央分離帯に接触した、と分析した。
事故当日の始業点呼時はアルコールが検出されておらず、点呼時に検出されないよう、意図的に点呼後に飲酒した、と推定した。運行途中に長い休憩を取ったことについて「帰庫後に検出されないようにするためだった可能性がある」として、事故以前から常習的に飲酒運転を行っていた可能性を指摘。事故前1カ月に最高速度を大きく超える速度での走行が複数回確認され「法令順守に対する意識が低い状態だったと考えられる」としている。
事業者に対しては、あおり運転の苦情が多かった当該ドライバーを含め、適性診断による運転特性の把握を行っていなかったほか、安全運行に関する定期的な指導監督や運行記録計・ドラレコの映像を使用した指導も行っていなかったことなどを指摘。安全最優先、法令順守の企業としての姿勢を社内全体に示せていなかったことで、飲酒運転・速度超過の運行が繰り返され、事故につながった可能性があると言及した。
その上で、飲酒運転根絶の決意と姿勢を示し「飲酒運転をしない・させない企業風土」を構築するよう求めた。そのほか、再発防止策として①「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」を活用した正確な情報の理解・浸透②事故事例や統計データを使用した飲酒運転の危険性の理解形成③運行途中での長時間休憩後の携帯型アルコール検知器を使用した確認④アルコール依存症のスクリーニング検査による飲酒習慣の確認――などを挙げた。

テック・サービス

フジトランス、個室型休憩室を充実化

フジトランスポート(松岡弘晃社長、奈良市)は、ドライバーの個室型休憩室の充実化を進めている。心身共にリフレッシュできる空間設計を行うとともに、映像・デジタルコンテンツを楽しめるようにした。ドライバーの休憩時間の質を高め、安全運転や定着率の向上につなげる。
7月29日、野田支店(千葉県野田市)で、報道向けに内覧会を実施した。
同社は、全国150カ所以上の営業所全てに個室型休憩室を完備。野田支店では10室を設けており、このうち1室について新たな休憩室「富士CLUB」として5月から運用を始めた。
インターネットカフェなどでデジタルコンテンツを提供するNet Time Japan(大場健嗣社長、東京都港区)と連携。しっかり休める環境の確保を軸に、改装だけでなく、室内のパソコンで映画や漫画、スポーツ観戦などを楽しめるようにした。
野田支店をモデルケースに、全国の営業所での展開を目指す。7月からは、三重支店(三重県亀山市)の1室でも運用を開始。両支店では、場合によって次の運転まで20時間以上空くドライバーもいることから、質の高い休憩環境を用意して疲労回復やリフレッシュを促す。ドライバー向けの運行マニュアルを見れるようにするなど、デジタルコンテンツの改善も図る。
こうした環境を採用強化や定着率向上にも生かす。快適な休憩室を設けている点をアピールし、ドライバー確保につなげる。
松岡社長は「社員を採用できる会社が生き残る」と強調。ドライバーだけでなく、整備士の採用にも注力する考えを示す。
大場社長は「『ネットカフェのような空間を実現できないか』との話をいただいたのが出発点。今回の企画で、フジトランスポートさんの採用ブランディングとドライバーによる情報発信の強化を重視している」としている。(土屋太朗)

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