
青森県・八戸港の八戸飼料コンビナートを拠点に飼料を運搬する地元運送事業者は、工場-農場を1日に何往復もする。 しかし、労働時間の上限を守りながら従来通りの輸送回数をこなすことが困難となっている。
青森県・八戸港の八戸飼料コンビナートを拠点に飼料を運搬する地元運送事業者は、工場-農場を1日に何往復もする。 しかし、労働時間の上限を守りながら従来通りの輸送回数をこなすことが困難となっている。
運行の効率化が急務となる一方で、運賃交渉の停滞や積載効率の悪さが経営を圧迫し、更に、ドライバーの付帯作業の多さが足かせとなっている。 (鈴木明香理) 輸送先の農場で添加剤をタンクに投入するドライバー 現場での効率化に向けた努力だけでは経営安定化は難しく、適正な運賃の収受と「付帯手数料」の導入が不可欠だ。 ドライバーは、荷役作業に加え、飼料添加剤の導入や農場での残量タンクの確認といった本来の業務ではない付帯作業への対応が求められており、運行効率化を妨げている。 これに対し、釜渕運送では独自に16項目の付帯作業料一覧を作成し、2024年10月から運送料と別建てでの徴収を開始した。
現在の進(しん)捗(ちょく)率は70%に達している。 付帯作業が収益化されつつある半面、作業現場での安全性確保という課題が顕在化している。 「付帯作業はやめた。 安全が確保されない状況では、作業料をもらったとしてもできない」と、釜淵商事の朝生潤副社長は断言する。
現場では、ドライバーが20~30㌔の飼料添加剤を農場のタンクに投入するという、転落の危険性がある作業を長年行ってきた。 農場側の高齢化に伴い、安全帯を設置できない危険な環境で作業を強いられるケースが後を絶たない。 転落事故リスクを放置することは、ドライバーの離職や将来的な人材確保難に直結し、安定的な輸送体制そのものを揺るがしかねない。 安心・安全の確保が事業継続の最優先事項となる。
効率的な運行体制の構築では、高病原性鳥インフルエンザ発生時の防疫作業によるドライバーの長時間拘束も喫緊の課題だ。 消毒ポイントでの長時間待機や、施設入退場・積み下ろしの都度義務付けられる複数回の消毒作業が、ドライバーの拘束時間を大幅に増加させている。 釜渕商事の事例では、1運行当たり最低30分の遅延が連日発生し、ドライバーの労働時間が日常的に増加する事態に直面した。 ほぼ年中無休の飼料配送業務では、月間80時間の時間外労働時間の上限を大幅に超過する事態を招く。 国はこれを特例措置の適用外(非災害)としているため、必須である消毒作業の中止や効率化は難しく、有効な対策が取れない。 更に、殺処分に伴う業務停止リスクも甚大だ。 農場には補助金が見込まれる一方で、運送事業者には保証が一切ない。 毎日飼料を運ぶ安定した仕事に見えるバルク輸送は、農場が健康な状態での稼働が前提であり、感染症により仕事が突如失われるリスクと常に隣り合わせだ。 釜渕氏は「バルク車は、損害を他の荷物でカバーできない。 人手不足で業務量が制限される状況で、どう収益を確保・拡大していくかが課題だ」と懸念する。 運行効率の向上や付帯作業料の徴収など、経営改善に向けた現場の取り組みは進展を見せる一方で、業界が抱える構造的な課題は依然として残っている。 持続的な飼料輸送体制を確立するためには、運送事業者、荷主、行政が連携し、負担の偏りを是正する構造改革が求められる。 地元事業者の主力であるB飼料(豚・鳥用)の輸送では、農場からの頻繁な小口注文により、積載率が6割程度という非効率な「少量輸送」が常態化しており、積載量別の運賃体系では、固定コスト(人件費・燃料費)の回収が難しい。 これに加えて、「500㌔だけ」といった突発的な少量・不定期注文や、業務時間外の無理な配送依頼が効率的な運行を妨げている。 現場では、出荷するまで細かく調整し、最大限積めるよう努力しているが、需要のバラツキが大きく、満載運行が難しい状況だ。 過積載防止の重要性が高まり、荷主側も積極的な協力姿勢を示す中、運送現場の実態は大きく異なり、最大積載量を下回る非効率な輸送を強いられている。 こうした状況を受け、釜淵商事(釜渕清嗣社長、田子町)は、注文受け付けを前日午前10時までに設定し当日注文を廃止。 更に、オーダー数に依存しない1車両単位での固定運賃制へ移行した。 川内運送(佐々木研社長、五戸町)でも、急な依頼には対応せず、同社主導の計画的な運行スケジュールと配車を提案・実施することで、輸送効率を高めている。 佐々木社長は「防疫上の理由でA飼料(牛用)とB飼料を完全に分ける必要があり、非効率な配送を招いている」と指摘する。 また、釜渕運送(田子町)の釜渕嘉与社長は、コスト削減と運行効率の改善に向け、農場側の飼料引き取りを前提とした在庫保管・管理拠点であるストック・ポイント(SP)の構築を推進する。