家畜飼料輸送の現場で、担い手不足に対する危機感が一段と高まっている。宮崎県では、養豚事業者の団体と飼料輸送事業者による意見交換が行われた。荷主である養豚事業者側が主導し、トラックドライバーの安全対策を協議する場を設けるのは極めて珍しい。 背景には、飼料輸送を巡る課題を現状のまま放置すれば、畜産物の安定生産そのものが立ち行かなくなるとの懸念がある。今回の動きは、宮崎、鹿児島の両県のトラック協会と九州トラック協会の飼料輸送部会が、組織的に意見を集約して行政や荷主へ現場の窮状を粘り強く訴え続けてきた成果とも位置付けられる。 こうした現場の取り組みに呼応する形で、行政も動き始めている。都城労働基準監督署は1月、管内の主要な畜産事業者を一堂に集め、合同の安全説明会を初めて開催。飼料輸送事業者も招かれ、飼料タンクやバルク車での高所作業の削減に向け配慮を求めた。 飼料タンクの倒壊にドライバーが巻き込まれた場合、労基署は原則としてドライバーを雇用する運送会社を指導するが、タンクを管理している農家を直接指導するのは制度上難しい。 こうした中、畜産事業者向けの労働災害防止説明会で労基署がドライバーの安全確保に踏み込んで指導した点は、従来にない対応と言える。飼料輸送事業者の間では、事故原因の排除に向けた一歩として評価する声が広がっている。 農業と深く関わる飼料物流の課題は範囲が広く、一朝一夕に解決できるものではない。現場には「状況は変わらない、変えられない」といった声があるのも事実だ。だからこそ、県内や九州、全国で現場の声を集め、高所作業の負担軽減や、運賃・取引条件の見直しが必要であることを社会全体で共有していくことが重要になる。行政や荷主の理解を得る一方で、運送事業者自身も、これまで当たり前とされてきた作業や慣行を見直す姿勢が求められる。担い手の安全を守り、無理のない形で事業を続けていくための話し合いと工夫を、着実に重ねていきたい。(上田慎二)