【主張】運送過程はスキップできない

情報技術の発展で、さまざまなことが効率的に行えるようになった。店舗や図書館に行かなくても、商品や情報をインターネットで検索可能で、欲しい商品があれば、ワンクリックでキャッシュレスのネット決済で購入でき、配達されてくる。
 IT革命はこれまで必要だった手順の省略を可能にし、手間と労力が大幅に削減された。「では、物流は」と考えると、モノを運ぶ手段は時代とともに変化したものの、まだまだ人の手に頼らなければならない。「物流効率化」と言ってはみても、モノを移動させるプロセスの省略や簡略化は、現代でもなお限界がある。
 「モノの瞬間移動を可能にする技術でも開発されない限り、運送という仕事はなくならない」という運送会社社長の言葉を、ここで以前にも紹介したことがある。社会にとって不可欠で、ビジネスとして大きな可能性があるが、物流効率化という言葉だけが先行し、モノの移動はつまるところ人の手によらなければならないという本質を忘れ、「物流は効率的になった」と誤解している人が多いように思えてならない。
 Z世代と呼ばれる若い人は、スマ-トフォンをタップするだけで欲しいモノが翌日に届くことは知っていても、それがどれだけの人の手を経て運ばれているか気に留めることは少ない。運送の現場で若年労働者が不足していると言われて久しい。「人がいなくても、最新技術で効率化すれば何とかなる」という誤解が社会の中にあるなら、物流効率化はこれを解くことから始めなければならない。
 最近の若者は、タイパ(時間対効果)を重視するとも言われる。他業種より労働時間が2割長く、賃金水準が2割低いようでは、どれだけ社会的に意義のある仕事だと訴えても魅力を感じないだろう。人の手間がかかるからお金もかかるということを、荷主はもちろん社会全体にもっとアピールし、業界を挙げて運賃アップに取り組まないと「物流費の上昇」の本質は理解されにくい。選挙運動が人海戦術からネット戦略に急速に取って代わっているようには、運送現場の効率化は簡単にいかない。
(小菓史和)