某美術館の有料年間会員に登録した。「生活の中の美」を基本理念にしたこの美術館は、60数年前に会社創立60周年記念事業として設立。企業メセナの先駆け的存在だ。3千点余り収蔵するが常設展示はなく、企画展の中で収蔵品を展示している。
全国には公立から個人まで大小の美術館が存在する。個人が蒐集{{しゅうしゅう}}した膨大な美術品を保管し展示する個人美術館を巡れば、コレクターが個人のため人が見え隠れして面白い。公立美術館で興味をそそられるのが新収蔵品の展示と紹介。購入・蒐集した理由が明らかにされ美術館の目指す方向が見える。
蒐集と言えば、購入した作品が贋{{がん}}作{{さく}}と判明し話題となった美術館が先進的な取り組みを企画した。「購入・収蔵の経緯や科学分析の内容を紹介することで、作品について多角的に再考」し「従来的な鑑賞とは異なる視点で作品に向き合うことにつながるはず」として「特別展示・調査報告再考《少女と白鳥》」を展示した。贋作にまつわる事件は多い。その際の対応の多くは「展示を中止し今後の取り扱いは慎重に」だろう。今回のアプローチは、市場で流通する作品の20%が贋作と言われる美術品取引の今後に一石を投ずるかもしれない。
美術品の話題は尽きない。今年も展覧会が目白押しだ。展覧会の成功には美術品輸送を担う各社の高度な技術力が不可欠。待望のグランドオープンを果たした「大エジプト博物館」には日本の円借款に加え、文化財取り扱い技術も生かされたと聞く。私が現場営業で経験した美術品輸送の緊張感がよみがえってきた。