【主張】「シン・荷主」へと脱皮せよ

今までは人のことだと思ふたにおれが死ぬとはこいつはたまらん
 2025年の大河ドラマ「べらぼう」で注目された、天明狂歌ブームの立役者、大田南畝の辞世の歌だ。トラック運送事業者は「トラック適正化2法」で規定された事業許可更新制の導入で、廃業の憂き目に遭ったとき、こうした心境に至るのかもしれない。
 一方、「おれが責めとは」と読み替えれば、4月の物流効率化法(新物効法)の本格施行で、物流効率化の中長期計画の作成・定期報告が義務付けられる一定規模以上の荷主企業(特定荷主)の心境を表すのではないか。
 特定荷主に対しては、物流統括管理者(CLO)の選任義務も課せられる。しかし、昨年末に「対象となる企業のうち、既にCLOを選任したのは1割に満たない」という報道があった。
 その後、選任した企業は増えてきたはずだが、ある大手メーカーの若手社員は「上層部はCLOが何をするのかすら分かっていない。お飾りを置いて終わりになるのでは」と率直に口にする。物流ニッポンのX(旧ツイッター)に以前投稿された狂歌「某役員CLOに俺はなる! ところで何をすれば良いのか?」が、荷主企業の現実を的確に表しているという、笑うに笑えない状況だ。
 CLOは、役員クラスから選任しなければならないとする要件が高いハードルになっているようだ。「ならば物流部長や本部長を役員に昇格させれば良い」との意見もあるが、資質やキャリア、ほかの役員とのバランスなど各社の事情もあるため、そう簡単な話ではない。物流のスキルはなくても、周辺領域や経営について広く知見を持ち、企業活動全体での物流の役割・責任を見渡せる役員が就き、物流のほか、調達、生産、販売など各部門に精通する社員で構成する「チームCLO」で推進するのが最も現実的な手法ではないか。
 新物効法の条文で、荷主も物流を担う主体だと明記された。これからは、単なる発注者としての「真荷主」ではなく、CLOとそのチームを中心に物流の改善に主体的に取り組む「シン・荷主」への脱皮が求められている。(田中信也)