【ちょっといっぷく】フリーライター 橋本 愛喜氏、「久米宏氏」への憧れ

私の1冊目の書籍刊行は2020年3月20日。新型コロナウイルスの第一波がやって来ようとする頃だった。執筆中は「書店でサイン会やイベントとかできたらいいな」なんて心躍らせていたが、一つもかなわず。「送料無料って言うな!」と力説した書籍が、外出自粛によりアマゾンで「送料無料」で売れていく様は、実に皮肉なものだった。
 トラックドライバー目線の書籍は珍しかったのだろう。多くのメディアが取り上げ、ファッション誌にまで出た。しかし、どんな依頼の中でも忘れられないのは、一番最初に来た番組出演。
 原稿が印刷所に送られた頃、担当編集から興奮気味に連絡があった。「橋本さん、ラジオ出演だって」。アナウンサーの久米宏さんの番組だった。
 わが家では夜のテレビは「ニュースステーション」一択。言葉に迷いのない久米さんに、いつしか持った感情は「憧れ」だった。そんな娘の隣で父が久米さんの発言に「そんなけったいなことあるか? あるわけないやろ」とヤジる光景を今でも思い出す。
 そんな人の番組に出られたのは、正直書籍を出せた喜びより大きかった。書籍が印刷会社から届いておらず、目の前の久米さんは、原稿のままの分厚い冊子を読み込んでくれていた。
 「僕が自民党を批判するのは与党だから。他党が与党になったら、同じように批判する」。メディアは権力と対立し、世論からも独立する。彼から学んだジャーナリズム精神だ。
 久米さん、ありがとうございました。どうぞゆっくり休んでください。