運送事業者から「2030年問題」を耳にすることが増えた。ドライバー高齢化による退職に伴い輸送力が3割以上減少し、荷物が運べなくなるという。多くの事業者は若手の採用を進めているが、思うように採用・定着が進まない。運送業界の古い労働慣行が、若者から忌避されているのだ。恐らく、そこを直視して改善しないと、若い人は集められない。労働慣行と言っても、長時間労働ではなく、給与計算の仕組みのことだ。
先日、専門紙の記者として働き出した時に覚えた違和感を思い出すことがあった。改善基準告示を説明する講習会で、労働基準監督署の監督官が「適切な労働時間の管理を」と呼び掛けながら、拘束時間から休憩時間を差し引いて労働時間を算出すると説明していた。だが、休憩時間には荷待ちなどが充てられていることが多い。「荷待ち時間だろうが、業務命令で拘束されているのに、合法でもおかしい」と感じた。
外部の人が運送業界を見た時、11時間拘束していても荷待ちが2時間だから労働時間は9時間で計算する、という仕組みは受け入れられないはずだ。
こんなことを思ったのは先日、生成AI(人工知能)から「外側の視点」を教えられたからだ。歩合制を使わない給与制度を導入した場合の原価予測、いわゆる「壁打ち」をしていた。生成AIから、歩合給から人事評価に連動した等級制賃金への変更、あるいは賞与制度の導入を提案された。その場合、運賃の人件費比率は4割以下に収まらず、6割以上に達し、今と同じ働き方はできない――と言われた。
生成AIは手厳しい。歩合制を「残業代の事実上の踏み倒し」と断定し、拘束時間と労働時間の差を「隠れ人件費」と呼ぶ。「これを法適合させ、賞与や等級制度を採用すると、分母(売り上げ)が変わらない限り、分子(人件費)だけが膨らむ」「『正しい賃金体系』と『従来の運賃』は、数学的に両立しない」と宣告された。衝撃的な言葉だ。
しかし、運賃の2~3割の値上げに耐えられる荷主は多くなく、分母は増やしにくい。手詰まり感があるが、ここから変えないと駄目なのだろう。(佐々木健)