【主張】ドラマが描く24年問題その後

2年前は各メディアが「2024年問題」「物流危機」を連日報じていたが、目にする機会はすっかり減った。その中で、1月に放送されたNHK総合テレビの連続ドラマ「テミスの不確かな法廷」の第3話と4話には、今も続いている物流業界の課題が重層的に盛り込まれていた。
 以前に放送されたNHKドラマ「あなたのブツが、ここに」や、映画「ラストマイル」とは違い、主人公は物流関係者ではない。ASD(自閉スペクトラム症)など発達障がいを抱える裁判官の奮闘と苦悩がテーマで、ここでは運送会社への民事訴訟が描かれた。
 事故で歩行者とドライバーの双方が死亡。ドライバーの娘は父親の勤務していた会社を相手取り、原因は過重労働にあるとして損害賠償請求を起こす。原告側弁護人は「ドライバーは以前にも過重労働で事故を起こし、時間外労働が常態化していた」と指摘。
 これに対し、被告(会社)側弁護人が「その事故は24年より前で、法改正以降の時間外労働は制限の範囲内だ」と反論すると、原告側は中小運送会社の倒産が増えているとし、「ドライバー不足で残業時間も短縮されたのに、この会社はなぜ同じ総量の荷物を運べているのか」と追及する。
 被告側は「長距離では中継輸送を行っている」とした上で、「死亡したドライバーは会社に内緒で副業をしていた。過重労働は自己責任だ」と主張。しかし、事故直前の蛇行運転は人手不足のため行った過積載の影響だと判明し、最終的に、被告の運送会社に業務委託した物流大手も責任を問われることになる――。
 このドラマは、長時間労働が規制されても、人手不足や下請け構造の問題は簡単に解決できないことをうまく描いていた。また、人手不足に対応するデジタルトランスフォーメーション(DX)については、「導入にかなり費用が掛かる」「中小事業者には難しい」と、会議で裁判官が疑問視する場面があって、法廷の外に視点を変えた描写も丁寧だった。
 24年以降も法改正は相次ぎ、全てを守って安全に荷物を届けるのはとても困難なミッションになった。そこにドラマの視聴者が気付いてくれると良いのだが。(星野誠)