【主張】並行在来線、早期に道筋を示せ

2025年末、初めて貨物列車に乗車させてもらう機会を得た。それも青函トンネルを通るルートで、正面からトンネルの看板を見られたことなど、貴重な経験だった。北海道と本州との鉄道輸送では、北海道新幹線の札幌延伸に伴う並行在来線の在り方について議論されているが、なお明確な解は見えない。札幌延伸のスケジュールが想定より延びたことで、議論がたなざらしになったようにも映る。有識者会議による中間まとめは出たが、早期にもう一段踏み込んだ道筋を示すべきだ。
 並行在来線については、北海道新幹線が札幌に延びるのに伴い、函館―長万部の区間がJR北海道から経営分離されるため、同区間を走る貨物鉄道をどうすべきか議論してきた。仮に貨物鉄道専用の区間となれば、並行在来線としては全国初の事例となる。
 貨物線を残す場合、保有主体や維持管理費がネックとなる。日本貨物鉄道(JR貨物)単体ではとても対応できないが、国や北海道、沿線自治体も明確な姿勢を打ち出していない。
 国の有識者会議は昨年9月、「少なくとも貨物鉄道の機能を確保するのが必要」との中間まとめを発表。だが、上記の課題については、具体的な方向性を示さなかった。
 また、昨年3月、トンネル工事の難航で、札幌延伸が30年度末から38年度末以降に遅れる見通しが発表された。計画が延びたことも、議論の停滞につながったように映る。
 関係者が多く、議論すれば簡単に解決するテーマでもないが、札幌延伸の計画が遅れたことで、貨物の議論も止めてよいというわけではないだろう。並行在来線だけでなく、JR北が単独で維持できないとする「黄線区」や、そもそも青函トンネル老朽化の問題もある。今後どのような環境変化が起こるか分からないが、だからこそ、早い段階で方向性を打ち出す必要があるのではないか。
 貨物鉄道による長距離輸送では、複数の運転士や保線作業員など、多くの関係者が支え、物流維持を実現している。貨物鉄道の乗車経験を通じ、そんな当たり前のことを改めて認識できた。この当たり前が、万一にもなくなるようなことがあってはならない。(土屋太朗)