「ブラジルにお年玉文化はありません!」
小学3年生の私に母はそう言った。日本にはお年玉という夢のような文化があると知った直後だった。その言葉はやがて私の年明けのお決まりのせりふになり、「幾らもらった?」と友人に聞かれれば、決まってそう答え、身内の笑いのネタにしていた。
ブラジル人の自分は大人になってもお年玉を渡す側にはならないのだろうと、そんな風にどこかで思っていた。
ところがこの年末、両親が久しぶりにブラジルで年を越すことになり、日本に残った私は知人のブラジル人家族が開いた集まりに顔を出した。日本で生まれ育った知人の子どもに「サミー、お年玉ちょうだい!」と言われ、胸がじんわりと熱くなり、自然と「ブラジルにお年玉文化はない!」とあの頃と同じ言葉がとっさに出た。
その子は、少し悔しそうな表情をして、唇をとがらせた。そこに、かつての自分の姿を一瞬だけ見た気がした。あの言葉は私の手を離れていった。(ダシルバ・サミー)