全国各地のトラック協会の本部や支部などで2025年から、交通事故・労働災害防止大会に合わせて「生命(いのち)のメッセージ展」が開かれている。幾つか取材した中で、暴走する自動車に大切な娘を奪われた父親の発した言葉が、強く、深く、心に刻まれている。
生命のメッセージ展は、犯罪や事故、いじめなどで理不尽に人生を断ち切られた犠牲者が主役のアート展だ。一人ひとりの等身大の人型パネルと写真、遺品である靴を展示。それぞれのパネルには生前のエピソードのほか遺族の思いが記されたものもあり、メッセンジャーとして命の輝きや尊さを伝えている。
声を発することができなくなったメッセンジャーに代わり、命を不条理に奪われる悲しみや苦しみを、肉声で訴える遺族の講演を聴く機会があった。登壇したのは、2012年に無免許の少年が運転する車に突っ込まれ、集団登校中だった当時7歳の次女、真緒さんを失った小谷真樹(まさき)さん。
「最愛の娘を奪われて」と題し、「真緒の笑顔も未来も、家族の幸せも、全て奪われた」と強調。更に、「今でも毎年の法要の際、目を開けると、『真緒が立っていてくれ』と本当に願っている」と、声を震わせた。
中でも印象に残ったのが、何度も繰り返していた「事故ではなく『事件』」という言葉だ。事故と事件の違いは、一般的に故意の有無によって分けられる。真緒さんが亡くなったのは事故として扱われている。無免許の少年が暴走させた車によって最愛の娘を奪われた遺族が、意図せずに起こった事故ではなく、事件と感じているのは当然だろう。
そして、小谷さんは聴衆にこう語り掛けた。「誰もが、被害者にも加害者にもなり得る。飲酒だけでなく居眠りやながら運転を見掛けたら、注意する勇気を持ってほしい。それで救われる命がある」
あの日以降、ハンドルを握る時だけでなく、誰かの運転に同乗する場合にも、小谷さんの声を思い出す。飲酒は論外だが、ながら運転は意図的な行動にほかならない。居眠り運転も防げるはずだ。ドライバーはもちろん運行管理者にも、このメッセージを受け取ってもらいたい。(矢野孝明)