米国の大都市圏で近年、ブルーワーカービリオネアと呼ばれる人が登場しているという。AI(人工知能)で代替しにくい現場職に従事する技術者が改めて評価され、賃金が上昇する現象だ。
日本では「2024年問題」を契機に、これまで通り物が運べなくなる時代の到来が危惧されている。米国のブルーワーカー事情と同様に、労働力不足が背景にある。
トラックドライバーに対する労働時間規制の強化は、過労死防止や健康確保といった働きやすく安全な職場への転換が目的だ。とはいえ、労働時間短縮によって賃金が下がれば、職業としての魅力や求心力は薄れてしまう。
大型トラックのドライバーはかつて、億万長者とまではいかないまでも、稼げる職業と認識されていた。それが、新規参入要件の緩和や運賃の実質自由化といった1990年の規制緩和で、事業者間の運賃値下げ競争が激化。長時間労働できつい仕事にもかかわらず、全産業の平均年収を下回る職業になっていった。
国は近年、物流の再規制へとかじを切っている。物流効率化法(新物効法)と改正貨物自動車運送事業法の「新物流2法」に続き、事業許可更新制、適正原価の導入、委託次数の制限、白トラ利用の禁止と、それらを担保するプログラム法で構成されるトラック適正化2法の成立は、行き過ぎた規制緩和を軌道修正する意図がうかがえる。
物流業界に一家言を持つ藤井聡・京都大学大学院教授が、広島県トラック協会(小丸成洋会長)主催の物流パートナーシップセミナーで説いた一つのフレーズが印象に残っている。「エッセンシャルワーカーの賃金が下がりなり手がいなくなるのは、国の安全保障に関わる」。また、さらなる規制緩和を推し進めた小泉純一郎内閣と経済学者の竹中平蔵氏を痛烈に批判していた。
24年問題が引き起こす物流危機は、全産業の経済活動や全国民の日常生活に関わる国レベルの重要課題だ。消費税の減税を議論する超党派の「国民会議」が耳目を集めているが、物流を持続可能なものにするため、エッセンシャルワーカーであるトラックドライバーを守る議論も深めてもらいたい。(矢野孝明)