【主張】「炭鉱のカナリア」から脱却

危険を知らせるため最前線に投じられるものを「炭鉱のカナリア」と呼ぶ。炭鉱を掘り進める時にカナリアを入れたカゴを持つと、有毒ガスが発生していたら鳴かなくなるか死んでしまうため、炭鉱労働者はいち早く危険地帯から逃げられたという。この仕組みは、トラック運送業界の多重下請け構造と似ていないか。
 「2024年問題」などに対応するため大手運送事業者は運行計画の見直しを進めたが、どうしても拘束時間や休憩時間を規定内に収められない運行にはどう対応したか。
 2次、3次請けの運送事業者を取材すると、元請事業者が、無理な運行を下請けに回している実態が見えてくる。大企業が大量に傭車を使って24年問題に対応しても、荷物を実際に運ぶ実運送会社が違反し続けている状態では、健全とは言えない。
 もちろん、これは一部の元請事業者の話だが、このまま実運送事業者が負担を押し付けられ、ドライバーが離れていったらどうなるか、想像に難くない。さらに「トラック適正化2法」により、26年4月から2次以降の委託制限が適用されるため、これまで通り「厳しい仕事は下請けに回せばいい」というわけにはいかない。
 かといって、法令順守をおろそかにする悪質な運送事業者に依頼していると、事業許可更新制が施行された後、その事業者が経営できなくなったら立ち行かなくなる。
 下請事業者も自助努力をした上で、コンプライアンス(法令順守)を徹底できない運行を強いる元請事業者には改善を求めつつ、現場から対策を提示するべきだ。応じてくれない場合はトラック・物流Gメンに通報する手段もある。
 一方、元請事業者は、荷主と直接の契約関係にないため要望しづらい下請事業者に代わり、発注者としての責任感を持ってリードタイムの延長や荷待ち時間の削減を訴えていく覚悟が必要だ。
 早急に労働環境の改善を進めなければ、ドライバー不足が悪化するのは目に見えている。実運送事業者、ドライバーを炭鉱のカナリアにせず、協力して運行計画を見直す体制づくりが急務だ。(根来冬太)