トラックドライバーが運転席のドアを開けて立ち小便をする動画がSNSにアップされて炎上し、社会に大きなインパクトを与えた。
最も大きな衝撃を受けたのは、運送事業者だったに違いない。このドライバー個人の道徳観に大きな問題があることは確かだが、業界としても「ごく一部のこんなドライバーがいるから、トラックはみんな行儀が悪いと思われる」と言って済ませるわけにはいかない。
高速道路などでの尿入りペットボトルの散乱も、大きな社会問題になっている。行儀の悪いドライバーは確かにごく一部かもしれない。しかし、かと言って、たかが1人や2人でないことも事実だ。ゴミで汚れているから「汚してもいいだろう」と考える心理も相まって、普段はマナーが悪いわけではない人も「まあ、いいか」とポイ捨てをしてしまう。水は低きに流れるのだ。
「それなら、奇麗にしておけばポイ捨てをする人も減るはずだ」と、近畿トラック協会は高速道路会社と協力し、サービスエリアやパーキングエリアでの清掃活動に取り組む方針を打ち出した。ドライバーのマナー向上への啓発にも力を入れる考えで、こうした努力が現場のドライバー一人ひとりに一日でも早く浸透し、ひいては業界の地位向上につながっていくことを願いたい。
話は変わるが、日本の西洋音楽黎(れいめい)期からオーケストラの育成に力を尽くした指揮者、朝比奈隆は「下手なバイオリン弾きに『明日はうまく弾け』と言うだけではできるはずがない。練習をきちんと積み重ねることが大切で、そうさせるのが指揮者である自分の仕事だ」と言った。
ドライバー教育も全く同じではないだろうか。一度注意をしたからといって、明日からマナーが急に改善されるはずはない。従業員教育に対する情熱を持ち続け、地道な取り組みを着実に積み重ねていく責任が、ドライバーという演奏者たちの指揮者の立場である事業経営者一人ひとりにはあるはずだ。
その努力の先にこそ、業界の社会的地位向上もあるに違いない。
(小菓史和)