【主張】特定技能 新たな潮流なるか

自動車運送業分野での特定技能外国人受け入れが、大手に限らず地方の中小運送会社でも広がっている。人手不足に拍車がかかる物流業界の新たな潮流になるのだろうか。
 日本の平均賃金は、バブル崩壊以降の長引く不況や非正規労働者の増加など複合的な要因が絡み、30年以上にわたり横ばいで推移。OECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中25位(2023年時点)で、G7(主要7カ国)では最下位のレベルだ。世界的に見て賃金面での優位性は下がったものの、東南アジアや南アジアの国々から、トラックドライバーを目指して日本にやってくる人は少なくない。
 実際に採用した日本のある中小運送会社経営者は「途上国の場合、地方に行くほど所得が低くなる傾向が強い。日本で1カ月も働けば現地の年収以上を稼ぐことができ、まだまだ求心力はある」と強調。また、日本の賃金や労働環境は、カースト制度が禁止された後も根強く残る国で、職業の選択が制限されている人にとっては、大きな魅力という。
 一方で、宗教や文化の違いから、採用をためらう日本の経営者は少なくない。代表的な例として、1日5回の礼拝をはじめ、豚肉と酒の摂取禁止、ラマダン(断食月)などの生活規範を厳守するイスラム教が挙げられる。
 しかし、イスラム教徒が大半を占める国から、ドライバー志望者を受け入れるケースは多い。複数人のイスラム教徒を採用した中小運送会社の経営者は「時代や社会の変化を背景に、イスラムの規範を柔軟に解釈する若者が増えている」と指摘。面接の段階で信仰の度合いを尋ね、業務への支障がほとんどないことを確認した上で、採用に踏み切ったそうだ。
 ただ、注意すべき点もある。日本国憲法は、信教の自由を全ての人に保障しており、日本に在留する外国人も含まれる。この経営者は「デリケートな問題なので、慎重に尋ねなければならない」とくぎを刺す。
 特定技能制度は運送業に次いで物流倉庫が追加され、27年度に運用が開始される見通しだ。物流を持続可能なものにするためには、現業職の人材確保が不可欠。外国人材は新たなトレンドの一つになる可能性を秘める。(矢野孝明)