【主張】リーダーの賢明な選択を願う

中東情勢は依然、不安定な状態が続いている。2月に米国とイスラエルがイランを攻撃してからというもの、世界は混乱に巻き込まれた。イランは報復にホルムズ海峡を封鎖し、タンカーなどがペルシャ湾を往来できなくなった。最近ようやく数隻が航行したとのニュースが報じられ、2週間の停戦に合意したとされているが、イスラエルはその後もレバノンへの攻撃を続けており、先行きは見通せない。
 トランプ大統領はあの手この手で降伏を迫るが、イランは簡単には折れない。このままでは長期化する恐れも否定できない。「戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい」という言葉を聞くが、言い得て妙だ。
 原油が入って来ないと経済も人々の暮らしも成り立たない。石油製品が高騰したり、品薄になったりすると、あらゆる方面に影響が及ぶ。災害時、物流網の寸断で店先に商品が並ばない不便さを感じた人も大勢いると思うが、令和のオイルショックとも言える今回は、先が見えないだけにさらに深刻だ。医療関係への医薬品や資材の供給が滞れば、国民の生命が脅かされる最悪の事態を招く。政府によると、国内の石油備蓄は二百数十日分あるとの見積もりだが、果たしてその後はどうなるのか。
 ぜひ地図を見ていただきたい。ホルムズ海峡は北側のイラン、南側のアラブ首長国連邦(UAE)とオマーンに挟まれた海域で、最も狭い部分は30㌔。ここが世界の生命線で、イランは同海峡を担保に大国と張り合っている。関係者の話では、陸路を含めてこの海峡を通過しない代替ルートの選択肢は極めて限定的で、効率が著しく悪くなるそうだ。
 ホルムズ海峡の事実上封鎖の余波は海運の話だけではない。航空運賃も高騰している。中東はアジアと欧州をつなぐ中継地で、その3分の1がUAEやカタールを経由しているという。この現状を、トランプ氏は想定した上で判断したはずだ。相次ぐ法改正で国が持続可能な物流構築を支援してくれる中、商慣行が見直されようとしている。ホルムズ海峡が正常化しなければ、その効果も薄れる。世界のリーダーの賢明な選択を願う。(今松大)