山徳建設、セレクトショップ運営 全国にファン憩いの場ダン

全国から多くの人が訪れる「WOOD STOCK Dan」
全国から多くの人が訪れる「WOOD STOCK Dan」

東日本大震災から15年。甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市に、全国から多くの人が足を運ぶ場所がある。山徳建設(同市)の山田直輝社長が手がけるセレクトショップ「WOOD STOCK Dan(ウッドストックダン)」だ。思い出が詰まった故郷を「人が集う温かな場所に再生させたい」という山田氏の思いが、大きな実を結んでいる。(鈴木明香理)
 まきの販売からスタートした「ダン」は、震災後に商店が激減した地域住民の切実な要望に応える形で歩みを進め、SNSでの発信を機に全国へとファンを広げてきた。店内には山田氏が厳選した古着やアメカジアイテム、レトロ雑貨、バイク・キャンプ用品、植物などが所狭しと並ぶ。愛好家のみならず家族連れも日常的に立ち寄る憩いの場として定着し、メディアや著名人も注目するスポットへと成長を遂げた。屋外には、デザイン性の高い休憩スペースや、まきを運ぶ旧車「ダットサン」なども備え、来訪者の目を楽しませている。
 敷地内には、岩手県第1号となる「陸前高田オートバイ神社」が鎮座する。津波で被災した実家跡地に建立された境内では「急がずゆっくり走ろう」と交通安全への願いを込めてデザインしたラクダのオリジナルキャラクターが参拝者を出迎える。神社には、バイクを愛する宮司の手によって魂が込められており、多くのファンが安全祈願に訪れる。夜間のライトアップは、暗闇に包まれた集落を明るく照らし、復興のシンボルとして希望の灯(あか)りをともし続けている。
 南部鉄器をあしらったあずまややトイレ、将来的にキャンプ・BBQ利用を見据えたたき火スペースを完備。参拝記念ボードとステッカー記録ボードには、参拝者の熱いメッセージやライダーが出発地点を記すステッカーが刻まれている。ショップは社務所も兼ねており、御朱印や守札、多彩なオリジナルグッズを展開する。
 2025年10月にはオープン1周年イベントを開催し、全国から集まった多くの参加者で活気に沸いた。今後はキャンプトレーラーを活用したカフェ営業やサウナサービスの提供も構想中だ。
 「震災という過酷な経験に背中を押されて始まった。地元で生きる人間として地域に貢献し、世界中から人を呼び込める町にしたい」と語る山田氏。ショップ経営を楽しみつつも、本業である建設・運送業務を実直に積み重ねることが活動の原動力になっているという。
 全てを失った場所は今、不屈の精神と故郷への深い愛着によって新たな思い出を刻む聖地となった。