モーダルシフトが思うように進んでいない。政府は、2023年に出した物流革新政策パッケージで、今後10年で鉄道・船舶の輸送量を2倍にする、という目標を掲げた。貨物鉄道の関係者は実現に向けて動いているが、25年度の輸送量は、前年度比0・5%増の2728万㌧だった。
これをJR貨物をはじめとする関係者の努力不足と断じるのは容易だ。しかし、過大な目標を掲げて具体策を打てていない政府の対応にも、問題がある。
先日、トラック協会がグループディスカッションによる研修会を開催した。テーマは「2024年問題」への対応で、時(労働時間短縮)・金(売り上げや利益)・人(労働力確保)にどう対応するか。この中で「改善基準告示をみんな守っていない。残業時間を守ったら荷物を運び切れないはず」との声が上がり、冗談交じりで「ごまかしているのでは」と指摘されていた。
これは冗談で済ますしかないが、冗談にならない話である。時短を進め、トラック輸送力が枯渇する。そこで出てくるのがモーダルシフトであり、貨物鉄道。さらにはトラック運賃の値上げのはずだ。
トラック輸送力が本当に不足した時に重要なのは、JR貨物が得意とする800㌔圏の長距離輸送ではない。海運に代替できない300㌔圏で、この距離帯でシフト可能なのは鉄道輸送しかない。ネスレ日本では300~400㌔圏で貨物鉄道の取り扱いを増やそうとしている。理由はトラック不足だ。トラック運送事業者がコンプライアンス(法令順守)を徹底すれば、貨物鉄道の需要は膨らむのではないか。
鉄道で無理なら、フィジカルインターネット(PI)で中距離・混載・中継輸送を構築していくはずだが、共同輸配送はリードタイムがかかるし、関係者との調整が増える。使い勝手の良い貸し切りトラックの運賃はもっと上がるはずだが、現状はそうなっているとは言い難い。
中小のトラック事業者は目先の資金繰り以上の経営を考えられず、短期的利益しか追えていないケースが多い。コンプライアンスで背中を押せるのは国だけなのではないだろうか。(佐々木健)