【主張】愛者・愛社も考える記念日に

トラックにはなじみが薄いかもしれないが、5月25日は「愛車の日」だそうだ。日本初の輸入車ディーラーであるヤナセが、2015年に創業100周年を迎えるのを機に、日本記念日協会に申請し制定された。「車を大切にする心」「車のある人生の豊かさ」をアピールし、愛車の精神をさらに広く伝えるのが目的という。
 奇麗な状態を保つために洗車したり、お気に入りのパーツやアクセサリーでカスタマイズしたり、愛車の考え方や大切にする方法は人それぞれだろう。一方、営業用車両にとって最も重要なのは、安全に走らせることではないか。
 安全な運行に欠かせないのが、言うまでもなく車両の点検・整備。法令では日常点検の箇所として、ブレーキ、タイヤ、バッテリー、原動機、灯火装置及び方向指示器、ウインドウォッシャー及びワイパー、エアタンク、運行で異状が認められた箇所――の各項目が示され、それぞれに基準が設けられている。
 ブレーキの不具合、タイヤの摩耗・空気圧不足、電気系統の不具合、エンジンオイルや冷却液の不足・劣化、ランプやライトの不点灯など、整備不良が原因で大きな事故を引き起こす危険性は小さくない。
 整備不良が原因となった悲惨な事故の典型的な事例として、19年9月に神戸市灘区で大型トラックが車6台に衝突し、運転者を含む9人が死傷した事故を想起する。この運転者は、エアブレーキ系統の不具合を繰り返し会社の管理者に報告していたが、会社の責任で行うべき車両整備は不十分で、事故当時はブレーキが利きにくい状態だったとみられている。
 見た目がどうとかだけでなく、見えないところに愛情を注ぐことが、運送事業者やプロドライバーに求められる真の愛車精神だと思う。特に、ひとたび事故を起こすと乗用車に比べ大事故につながりやすいトラックはなおさらだろう。
 車両の点検・整備を徹底するのはもちろんのこと、無理のない運行計画やドライバーの健康管理も大事だ。他人の命を守るだけでなくドライバーや会社のために、愛車とともに「愛(運転)者」「愛社」を考える記念日にしたい。(矢野孝明)