【主張】不幸な人生生む業種から脱却

3月に三重県亀山市の新名神高速道路で発生した大型トラックによる追突死亡事故は、重い衝撃をトラック業界に与えている。6人の犠牲者に対し、業界に関わる者として改めて深い哀悼の意をささげたい。被告のドライバーはスマートフォンを見ながら運転していたことを認め「直前にブレーキを踏んだが間に合わなかった」と供述しているという。プロドライバーとして言語道断の行為だが、被告を非難するだけでは抜本的な解決にならない。
 このドライバーは乗務経験20年以上で、勤務先では「人当たりが良く真面目」と評価されていたという。スマホの証言は明らかに裁判で不利だが、あえて供述したことに実直な人柄が感じられ、いたたまれない気持ちになる。批判を承知で書けば、6人の犠牲者や遺族の深い悲痛や無念に思いをはせつつ、一度のミスで死ぬまで重い十字架を背負うことになったこのドライバーの人生にも同情を禁じ得ない。
 トラックは、事故を起こせば想定を上回る被害が発生するだけに厳しい自律の精神が求められるが、ドライバーの自覚に期待するだけでは限界がある。点呼や安全会議などで脇見・漫然運転の根絶を繰り返し指導する一方で、最新デジタル技術を積極的に取り入れるべきだろう。
 ドライブレコーダーの車内カメラとAI(人工知能)技術を活用してドライバーの顔の向き、目線、まぶたの閉じる時間などを検知してスマホ操作などを防止するシステムは既にある。また、ながら運転を防止するスマホ向けアプリも出ている。GPS(衛星利用測位システム)や加速度センサーで走行を検知し、自動で画面ロックやアプリ制限を行うものが主流で、法人向けでは「KGmonap」「dLop」「eGUARD」などがある。トラック協会も助成制度を拡充して普及を図るべきだろう。
 一方で、会社側もドライバーへの連絡に対して返信を急がせないなど、運転に集中できる環境づくりを進めるべきだ。ドライバー任せではなく業界が一丸となって多方面からアプローチし、不幸な人生を生む業種から脱却しなければならない。(江藤和博)