M&A(合併・買収)を通じた物流業界の再編が一段と進みそうだ。大手を中心に広がるとともに、後継者不足に悩み事業譲渡を本格的に考える経営者は今後も増える。こうした中、仲介業者が乱立し、トラブルに発展するケースもあるため、国はM&A支援を行う者に対する資格制度をつくる方針だ。企業の存廃は、経営者はもちろん、社員や家族、取引先にも大きく影響する。健全な市場に向けた関係者一丸の取り組みを望みたい。
物流大手のM&Aの話題は尽きそうにない。5月、センコーグループホールディングスがUmiosロジ(旧マルハニチロ物流)を子会社化することを発表。2027年3月期の売上高1兆円の大台到達に向けた推進力にする。同月にはAZ―COM丸和ホールディングスも、売上高が180億円(25年5月期)に上る樋口物流サービスの株式取得の方針を決めた。
こうした流れは、物流維持のための事業拡大の戦略として、大手に限らず今後も続く。後継者不足を課題とする経営者はまだまだ多く、案件はさらに増えていく。
一方で、M&A成立後にトラブルとなるケースは少なくない。新型コロナウイルス下で企業の倒産が増え、仲介業者やファイナンシャルアドバイザーの数も拡大。M&A支援機関の登録数は、26年3月時点で3400者に迫る。
専用の情報提供窓口には、不適切な支援に関する情報も寄せられており、このうち深刻なトラブルにつながりやすい営業以外に関する事案も減少していない。
このため、国は資格制度の創設で支援機関の知識やスキル、倫理観の向上を図る。この制度がどこまで担保できるかは不透明だが、支援側の意識変革で良いマッチングが増えることに期待したい。
その上で、良い事例の創出には企業側の努力も欠かせない。あるM&A仲介のトップは「売り主は『この会社と一緒になりたい』と考えて選択する」と話す。売り主は、社員や家族の幸せを踏まえて譲渡の決断をする。この決断を後押しするためには、買い手自身の魅力を高めたり、きちんとした経営ビジョンを定めたりすることが一層重要になる。(土屋太朗)