【主張】熱中症から社員守る決断を

日本郵便が打ち出している屋外作業時の熱中症対策は、熱中症特別警戒警報が出たエリアで配達・集荷業務を原則休止し、警戒警報や気温がセ氏40度を上回る時は、気温の高い時間帯に業務を停止するという。社員を守る決断であり、多くの運送事業者も早急に同様の措置を荷主へ示してほしい。
 昨今の夏の暑さは、過去類例のないものになっている。厚生労働省は2025年6月に安全衛生規則の罰則付き改正を行い、熱中症発症者の早期発見に向けた社内体制の整備などを柱とする措置を求めた。25年の熱中症関連の労働災害は、死亡者が前年比39%減の19人で、休業4日以上の死傷者は43%増の1803人だった。
 同省は死傷者増加について要因を分析し、中小事業場での対策に不備があるとして、今年3月に対策ガイドラインを取りまとめた。その際の災害事例分析は建設現場が対象で、残念ながら着先荷主で問題を多数抱える陸運業の状況は参照されなかった。
 ガイドラインを取りまとめた厚労省の検討会で、熱中症の特性が多々指摘された。例えば、皮膚温度と体内温度を比較する実験では、45分間の運動後に皮膚温度を測定すると、比較的速やかに低下するが、直腸や食道などの内部体温はしばらく上昇を続けるという。さらに屋外と異なり、屋内は日没以降もWBGT(暑さ指数)が上昇する。
 つまり、日陰で作業をしていても常に熱中症を発症する可能性があり、一人でいて倒れれば、早期発見が遅れる可能性も高くなる。社外である着先構内では、自社社員以外の作業者との協力や連携が、労働者を守るために必要となる。
 その上での警戒警報である。業務停止は必要な判断だ。何よりも、熱中症の予後は良くない。重篤化すれば脳や腎臓など臓器がダメージを受け、運動機能への障がいも残る。日本郵便と同じ決断をするには、荷主を交えた交渉が不可欠となる。警戒警報発令時の体制整備とともに、社外に出て一人で働くことの多いドライバーを守れる体制構築を、一日も早く荷主に働きかけてほしい。(佐々木健)