【主張】「新幹線物流」の活用検討を

「JTB時刻表」6月号に、キハ82などの国鉄ディーゼル気動車を設計者として手がけた「キハの父」、石井幸孝氏のインタビューが掲載された。JR九州の初代社長を務め、事業多角化と魅力あふれる車両の投入で、分割民営化時に経営安定基金の拠出対象となる「三島会社」だった同社を上場に導いた立役者としても知られる。
 本紙も1月9日付でインタビューを掲載。御年93歳だが、驚異的な記憶力で、国鉄時代や分割民営時のエピソードが語られた。もっと驚いたのが、次の時代を見据えた構想。中でも、活用を訴え続けている「新幹線物流」は、物流専門紙の記者の視点からも先進性に圧倒された。
 新幹線での物流は、モーダルシフトの観点からここ数年で導入が進みつつあり、JR各社は手持ちで荷物を車内へ持ち込む貨客混載に取り組んでいる。JR東日本はこれを一歩進める形で、3月に日本初の「荷物専用新幹線」を盛岡―東京でスタートさせた。石井氏はこの取り組みを評価しつつ「全国で展開すべき」と主張している。
 新幹線でもコンテナ輸送を行うのが完成形だ。1964年に東京―新大阪で開業した東海道新幹線は貨物列車の運行計画があったとされ、JR貨物の東京貨物ターミナルと大阪貨物ターミナルは新幹線に接続可能。点検・保守や騒音・振動などの課題をクリアして夜間に貨物列車を走らせれば、モーダルシフトと速達性の両方を実現できる。
 さらには、北海道新幹線の札幌延伸後、ミニ新幹線方式で函館線を経由し、JR北海道が単独で維持困難な「黄色線区」である石北線に乗り入れ、農産物を輸送する案も提唱しているから、恐れ入る。
 画期的な構想だが、JR貨物はもとより旅客会社をもってしても実現は難しい。石井氏は「国が推進すべきオールジャパンの政策」と指摘する。壮大すぎるプランと捉えられるかもしれないが、国土交通省が推進する「自動物流道路」に比べ、既存インフラを活用しやすいはずだ。物流危機が叫ばれる中、鉄道へのモーダルシフトは進まない。鉄道再構築と物流改善の目玉政策として検討する価値は十分にあるだろう。(田中信也)