【ちょっといっぷく】ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター 森田章氏、AIとプライバシー

個人の検索履歴や金融取引、位置情報、購買記録――こうしたデータは日々収集され、匿名化された上で共有されている。従来、匿名化データから個人を特定するには多くの時間と専門知識を要した。だが、大規模言語モデル(LLM)の進化によりそのハードルは著しく下がり、政府などによる広範な追跡が可能になるのではないかとの懸念が広がっている。
 米国では、プライバシー擁護団体が法制度の抜け穴を指摘している。警察が犯罪調査のために個人の携帯の位置情報を調べる場合、裁判所の令状が必要だ。しかし、米政府は令状なしで民間のデータブローカーから匿名化された位置情報を購入できる。もし、政府がそのデータを使って個人を特定できるようになったらどうなるのか。
 もっとも、こうした懸念の多くは、現時点においてはあくまでも理論上のものである。しかしながら、米政府内で分散するデータ資産を統合しようとする動きも報じられている。また、米政府効率化省(DOGE)は、税務や医療など各機関が保有するデータを横断的に活用できる環境の整備を検討しているとも伝えられている。
 個人に関するデータの統合は、DOGEが目指しているように行政の効率化につながる部分もあるだろう。ただ、プライバシー保護の観点では、情報アクセスへの制限が安全装置として機能してきたことは間違いない。この相反する要素のバランスをどう取るのか、納得性を高めるためにどこまで情報を開示するのかについては、依然として議論が残る。