異常気象が世界各地で常態化する中、環境負荷を減らすことは将来世代はもちろん、現在の世代にとっても避けて通れない課題だ。新型コロナウイルス禍による経済停滞期には、河川の水質改善や都市のスモッグ消失が世界各地で報告され、人や車の活動が環境に与える影響の大きさが浮き彫りとなった。エルニーニョ現象の影響で、今年の日本も平年を上回る猛暑だという。トラック事業者にとって、環境問題は人々の暮らしと事業の継続に直結することを改めて意識したい。
先進的な実践事例はいくつも出てきている。長崎県のナガサキロジスティクスは、物流センター屋根の太陽光発電と、冷気が降下する性質を利用した「自然冷媒・下吹き式冷凍機」を組み合わせ、使用電力の4割超を自然エネルギーで賄っている。
また、熊本県のサトウロジックは、物流センターや電動トラックの電源に新・地域電力会社の再生可能エネルギーを活用することで、二酸化炭素(CO2)排出量を年間427㌧削減する。こうした取り組みは環境保護と同時に、燃料価格高騰への有効な対策として、コスト面でも威力を発揮している。
一方、再生エネルギー普及の障壁は依然として高い。太陽光発電やEV(電気自動車)導入への助成金は希望者が殺到し予算不足で不採択となるケースも少なくない。EVでは、同時に充電できる台数の制限や、充電に時間がかかる点がネックとなっている。また、脱フロンに向けた自然冷媒への切り替えが中小企業で進んでいない。日本冷蔵倉庫協会などは特に中小企業への補助率引き上げを求めているが、2030年までの特定フロン全廃、その後の代替フロンの段階的削減を見据え、国は今のうちに対策を強化しておくべきではないか。
環境対策を進めるのは、もはや単なるイメージ向上ではなく、燃料費を抑え、社会と共存して企業の持続可能性を高める合理的な経営判断である。実例とデータが示す通り、脱炭素は「もうかる投資」にほかならない。物流の未来を切り開くには、環境対策を戦略的投資と位置付け、官民一体でその推進を加速させるべきだ。(上田慎二)