エッセンシャルワーカーの大切さを、改めて実感する場面に出くわした。自宅近くの家庭ごみ集積所で、運搬車に荷物を載せる二人の作業員の姿とやり取りに、頭の下がる思いがした。
その日は資源ごみの回収日で、断捨離なのか引っ越しでもする近所の家庭からだろうか、(広島市で資源ごみに指定されている)衣類や布類で膨れ上がった大きなビニール袋が、いつにないほど大量に折り畳みボックスの中に置かれていた。
重そうなビニール袋を、マッチョな体格の若い作業員が一つずつ持ち上げ、満載に近いダンプ車の荷台に放り投げ入れている。自分にはとてもできない芸当だと感心しながら見ていると、新人らしき彼に向けて、一緒に作業するベテランとおぼしき中年男性が「声を出すなよ」と助言した。
重たい物を持ち上げるときに声を出すと力がより発揮されると言われているが、それとは違う。中年の作業員は「1回や2回ならいいが、余計な力を使い続けると無理が重なり、腰を痛めてしまう。スポーツや競技ではないからな」と伝えていた。学術的な根拠や真偽は分からないが、先輩から後輩に受け継がれるこの仕事ならではの大事なコツなのだろう。
しばらくして再び集積所の前を通ると、ゴミは一つ残らずなくなりすっかり奇麗になっていた。あの人たちのおかげで町の美化が保たれている――。感謝の気持ちと同時に、あるつらいエピソードを思い出した。
廃棄物の収集運搬会社に勤務する若い男性社員が、結婚を機に退職した。その理由は「結婚相手の父親から『今の仕事を辞めるのが条件』と言われた」。この会社の社長は、泣きながらその話をしていた。転職を迫った父親は、娘が生涯の伴侶に選んだ男性の働く姿を見たことがあっただろうか。
別の廃棄物収集運搬会社の社長から、こんな話を聞いたことがある。「うちの若い社員が『日本一のゴミ屋になりましょう!』と言ってくれた。めちゃくちゃうれしかった」
職業で人の価値を左右しては決してならない。ましてや、エッセンシャルワーカーと呼ぶからには。(矢野孝明)