【主張】出所者や退職者に門戸開いては

日本財団の職親プロジェクトという事業がある。刑務所などからの出所者が社会に戻って真面目に働こうとする活動を支援し、自立更生を後押ししている。在所中に就労先を決められるようにする就労支援などに取り組んでおり、関西の企業7社からスタートし、全国に広がった。
 先日、同宮城支部と北海道支部が合同で開催した講演会を取材する機会があった。講師はアイドルグループTOKIOの元メンバーの山口達也氏で、アルコール依存から社会復帰するまでの経験を語ってくれた。現在は会社を立ち上げて講演活動などを実施しているという。
 「セカンドチャンスを目指して」の演題でトークを展開したが、失敗によって降りかかる数々の困難や苦労を乗り越えてきた経緯を聞き、その社会復帰への本気度に心を動かされた。人間である以上、誰にでも失敗はある。大事なのは、それを教訓としていかに今後に生かしていくかだ。
 2022年の夏の甲子園大会で、東北勢初の全国制覇に導いた仙台育英高校の須江航監督がよく口にする「人生は敗者復活戦」という言葉が重なる。夏の高校野球大会は一度負けたら終わり。参加する全国3千余りのチームの中で、一度も負けずに大会を終えるのは栄冠を手にするたった1校のみだ。敗戦や失敗から学ぶことのほうが圧倒的に多い。
 ある会社の総務担当者と面談した時に聞いた話だが、ここ数年は一度退職した人を再度社員として迎え入れているという。大手を中心にこうした取り組みは進んでいる。もちろん退職理由にもよるが、一度離れたことで良さが見え、早まった行為を後悔している人も少なくないそうだ。在職する社員への配慮や待遇面などクリアしなければならない部分はあれど、お互いを良く理解しているメリットは大きい。
 日本の人口減少の流れを食い止めるのはもはや難しい。労働力確保のためには外国人に頼ることも選択肢の一つだが、これまで門戸を開いてこなかった人材の活用も視野に入れてはどうか。真剣に自立更生を考えている出所者や、一度退職した社員にも大きな可能性がある。(今松大)