【主張】熱中症 備えあれば憂いなし

2026年も夏本番がやってきた。25年の改正労働安全衛生規則施行により、全ての企業に熱中症対策が義務付けられた。トラックドライバーは荷役作業の熱中症のリスクが高いのはもちろん、中長距離運行時にトイレの回数が増えるのを嫌って水分摂取を抑え、脱水状態になりやすい傾向があるという。
 厚生労働省の調査では、24年に熱中症になった労働者は1257人(死亡31人)で、このうち運送事業は186人(3人)と、建設業、製造業に次いで多い。ドライバーには喉の渇きを感じる前に水分・塩分の補給を小まめに行うよう指導するとともに、危機管理の一環として、車載用のクーラーボックスや飲料、塩分タブレットを支給するのも有効だ。また、ファン付きベストは多くのトラック協会で助成制度があり、積極的に活用すべきだろう。
 しかし、装備をそろえれば万全というわけではない。熱中症で死亡した事例の多くが「初期症状の放置」「対応の遅れ」で発生しており、これらを防ぐ対策を定め、職場全体に周知しておくことが不可欠だ。改正規則では「報告体制の整備」「対応手順の作成」「関係者への周知」を企業の義務として提示している。
 例えば、ドライバーが荷役作業中に体調に異変を感じた時、どの担当者に訴えたらいいか。また、周りの社員はどんな応急処置を取り、どのタイミングで医療機関に連絡したらいいか。これらが定まっていないと右往左往して適切な初動措置が遅れ、重症化や死亡につながる。
 特に、ドライバーが出先にいるときは要注意だ。体調が急変した場合、多くの人は救急車を呼ぶのをためらうし、真面目な人ほど「会社に迷惑をかけてはいけない」という思いが働き、様子を見ようとする。こうした迷いを払しょくするには、対処方法をあらかじめ話し合い、共有しておくことが重要だ。
 救急車を呼ぶべきか迷ったら「#7119」(救急安心センター)に相談することだ。医師、看護師、救急救命士が症状を聞き取り、適切なアドバスをしてくれる。「備えあれば憂いなし」。職場ぐるみで熱中症対策を強化してほしい。(江藤和博)