ふらりとスーパーマーケットの食品売場に立ち寄るのが好きだ。
理由は2点ある。一つは、今を知れる点。地政学的リスクや為替変動は、並んだ商品に価格転嫁として現れる。気候変動は、生鮮食品の価格や質を不安定にする。ニュースで流れる世界情勢が食品コーナーを包み込んでいる。もう一つは、食事を取り巻く環境の変化が実感できる点。総菜や冷凍食品の充実ぶりには目を見張る。共働き、単身世帯の増加もあり、食事は「作るもの」から「組み合わせるもの」へ変化している。忙しい日常の中で当然の選択肢としてうなずける。
ただ、少し気になる話を聞いた。血液検査でたんぱく質不足の傾向が増えているという。私自身も基準値の下限にかかっていた。食べるものが豊富な時代に栄養が足りないというのは皮肉な話でもある。手軽に整えられる食事で、何を補って何を欠いているのか意識しにくくなっているのかもしれない。
内食・中食・外食という区分はあるが、重要なのは「どこで食べるか」から「何を選んで食べているか」へと移っている。日々の積み重ねが、年を重ねる先に身体に現れるからだ。「食の選択」の先には「身体への責任」が隠れている。
食事とは本来もう少し気楽に楽しむものであってよいはず。深く考えすぎるものでもないし、かといって考えなくてよいものでもない。その間で揺れること自体が、今の食卓の姿なのかもしれない。
そう考えながら、鶏肉コーナーではしばらく手が止まる。結局、鶏のムネ肉を選んでいる自分がそこにいる。