クレジットカード決済代行会社、全東信の破産手続き開始決定で、小規模な飲食店や小売店の間に大きな不安と混乱が広がっている。夕食ついでに一杯やろうと、妻と一緒になじみの居酒屋に行くと、入り口で店主が何やら慌ただしく作業していた。この店でも全東信のカード決済端末を利用しており、「都合により当分の間、お支払いは現金でお願いします」という告知を張り出していたのだという。
「少なくとも、7月に入ってからカード決済した代金は、恐らく全部ダメでしょうね」と店主は表情を曇らせた。チェーン店や大規模に他店展開している一部の業者を除き、飲食業界はほとんどが中小企業か個人経営だ。9割以上が中小零細といわれる運送業界に似ている。
ITやAI(人工知能)の技術は急速に進歩を続けており、便利なサービスが次々と生まれては世間に提供され、普及している。先の飲食店の例でいうと、支払いの時に最近は「カードですか?」「バーコード決済ですか?」とまず聞かれるので、昭和生まれで現金主義のアナログ世代は、いささか違和感さえ覚えていた。世の中が便利になり過ぎると、複雑な歯車が一つ狂っただけでシステムは機能しなくなり、大きな混乱が生じるのだ。
運送業界でも、ETCシステムの不具合で大混乱になったことは記憶に新しい。昨今は、マルウエアだの、ハッキングだの、コンピューターシステムやネット社会の隙を突く犯罪行為も多発している。アサヒグループホールディングスに対するサイバー攻撃によるシステム障害も、物流網に大きな打撃を与えた。
トラック輸送の柔軟な機動力は、大規模災害時でもこれまで大きな力を発揮してきた。一方で、深刻な人手不足や物価高騰の影響により、大幅な効率化を図ることが喫緊の課題とされている。特に中小零細では、ITやAIの活用が不可欠だ。しかし、トラック輸送の本来の力を維持していくには、中長期的な視点に立った人材の募集や育成、現場の従業員のノウハウ継承といった地道な努力が欠かせないということを、決して忘れるべきではない。(小菓史和)