【主張】理想に向かって変わるべき時

物流業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれて久しい。2030年度までの総合物流施策大綱では、物流を「より上質で魅力ある産業」に転換する施策の一つとして掲げている。フィジカルインターネットの実装などをうたっているが、最も使うITツールが表計算ソフト、ブラウザーなどにとどまっている運送事業者は、まだまだ多い。理由の一つとして、日常業務での虚偽申告が挙げられるのではないだろうか。ネックとなるのは、ドライバーの労働時間管理だ。
 多くの中小運送事業者がDX推進に求めるのは、販売管理費の削減だろう。ドライバーの給与計算と取引先への請求書発行を自動化できれば、事務費用を減らせる。
 正しい数値を日報に記載し、そのまま計算できるなら迅速に進む。デジタルタコグラフなどから日報を自動作成するソフトも多い。だが、時間外労働の上限である年間960時間、拘束3300時間を超過して働く実態の前では、正確な時間を使用できない。そこで、労働時間を「加工」して管理帳票を作成する一方、給与計算には元の数値を使うという二重管理を行うケースが疑われる。
 DXでは運賃請求、ドライバーの日報に基づく給与計算と支払い、さらには車両の燃費から修繕費用までを一体的に管理できる。荷物を積んでいない車両を配車し、給与と告示上の上限拘束・労働時間から乗務可能なドライバーを選定して、予実管理とリアルタイムの運行管理を連携していく。その中でコストと収支が再計算され、適切な利益が残るのが理想だろう。
 DXを阻む要因として、告示の複雑な労働条件と時間管理をシステム上で再現できないという技術的な課題がある。しかし、あってはならないことだが、虚偽の労働時間管理が行われているとすれば、それも原因となり得る。ドライバーが「残業代で稼いでいる」という現実から、告示を「机上の空論」呼ばわりする声も多い。トラック適正化2法、特に「適正原価」の告示を前に、理想に向かって変わるべき時ではないだろうか。(佐々木健)