生成AI(人工知能)は多様な選択肢やアイデアを瞬時に生成できる。しかし、その中から何を選ぶかは人間の役割だ。創造性とは、必ずしも新しいものを生み出すことだけでなく、多くの可能性の中から意味があるものを選び取る力とも言える。この構図は企業にも当てはまる。企業も無数の選択肢から進むべき道を選び続けている。
企業の「選ぶ力」を規定するのは、組織の評価関数である。多くの選択肢から挑戦を奨励するのか、確実性を重視するのか。何を重く見るかが企業ごとに異なるため、同じAIを活用していても意思決定は変わる。AIによって知識や分析力がコモディティー(汎用(はんよう))化するほど、企業固有の競争優位は評価関数の違いに左右される。
日々の意思決定において何を選び、何を見送ったのか。組織の評価関数は、企業が判断の積み重ねを学習することで「この会社らしい」基準を形成していく。その評価関数が社員一人一人の思考や行動にまで内面化された状態こそが企業文化である。つまり、企業文化とは、組織が長い時間をかけて培ってきた評価関数にほかならない。
そう考えると、AI時代の経営者の役割も変わる。経営者は答えを示す人ではなく、組織が何を良しとして選び取るのかという評価関数を設計する人になる。AIが探索を担う時代だからこそ、経営者には、自社は何を大切にするのかという価値観の言語化と一貫した意思決定を行い、組織の価値基準を磨き続ける役割が期待されるのではないか。