土用の丑(うし)の日は、夏に売り上げが落ちるうなぎ屋のために平賀源内が考案した「販促キャンペーン」である。江戸は切腹につながらないよう縁起を担いで背開きにするのに対し、大阪は腹開き。関東は蒸してから焼き、関西はそのまま焼く。蒸さずに焼くので硬さが残るため、ご飯の間にうなぎをはさむ(まぶす)から「うな丼」を「まむし」と称する俗説にうなずくのは、やや古い関西人と言っていいかも。
大阪・千日前に「いづもや」という老舗のうなぎ屋があった。ここの「まむし並」はふたを開けると、タレのかかったご飯だけ。「うなぎがない!」と思いきや、ご飯の間からうなぎが現れる。
学生時代、この店に何度か足を運んだ。ある時、店員に「ぼんやないか! 大きうなったな」と声をかけられた。吉本新喜劇のようなシーンに「違います」と返すのが精いっぱいだった。だが後々「誰と勘違いしたのか」と気になってきた。人気番組「探偵ナイトスクープ」で謎を解明してもらおうとも思ったほどだ。
この店もだいぶ前に閉業した。かの店員が健在かも分からず、今となっては解明しようもない。(田中信也)