【主張】AIの将来見据えた対策を

冷凍食品大手ニチレイのシステム障害に伴う影響が一時期、連日のように報道された。外食チェーンやスーパーマーケットなど、消費者に身近な企業の物流に支障が出たこともあり、ニュースだけでなく情報番組でも多く取り上げられた。そこでは、欠品やメニュー変更に苦慮する街の人のコメントが紹介され、視聴者に伝わる。トラブルは特に耳目を集めやすいのだ。
 もともとはサイバー攻撃に対するぜい弱性に起因するもので、記憶に新しいところではアサヒグループホールディングス、アスクルといった事例が浮かぶ。今回のニチレイ関係のネット記事では、このような書き込みもあった。
 「これね、企業の悪い体質で、自分の会社なのに分からないからって平然とアウトソーシングして他人任せでしょ? 考え方によるが、自分の大切な子どもを育てるのを他人任せにしてるのと同じだよ。それが分からなければ永遠にイタチごっこだね」
 匿名を後ろ盾にした訳知り顔での上から目線だが、ネットコメントの顕著な例ではないか。浅い知識を基にしたもっともらしい発言だが、判断材料の乏しい人は納得するかもしれない。
 ニチレイのトラブル公表は13日。その翌日は、まだメディアでは一報を出す程度だったが、偶然にも同日にNHKでクローズアップ現代「ミュトスの衝撃~人間の限界を超える能力とは」が放送された。
 米アンソロピックの先端AI(人工知能)モデル「クロード・ミュトス」をベースに、将来のAI展開を予測する内容で、多大なメリットがある半面、サイバー攻撃や生物化学兵器の開発などへの悪用を懸念していた。中でも、強固なセキュリティー対策が必要な業種として、金融や通信と共に物流を挙げていたのが印象的で、リアリティーを持って受け止めることができた。
 ちなみに同じ日には、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が講演で「2040年ごろAI搭載の人型ロボットが10億台ほど稼働する。労働の主役が人類からロボット中心になる」と語ったそうだ。予測通りなら、もう15年もない。ネットの書き込みレベルの認識では、とても追い付けない時代に来ている。(河野元)