【主張】我慢に慣れず毅然と対応を

最近は大手チェーン店などに行くと、カスタマーハラスメントへの注意を呼びかけるポスターをよく目にする。カスハラとは、顧客や取引先からの暴言、暴力、理不尽な要求などにより従業員の労働環境が害されることを指す。10月にはカスハラ対策が強化され、事業主に方針の明確化や従業員への周知・啓発、相談体制の整備、迅速・適切な対応などの措置が義務付けられる。
 トラックドライバーについては長時間の荷待ち、契約外の付帯業務の強要、無理な納品時間の指定なども対象とされる。出荷・納品先でリフトマンから威圧的な態度で不当な要求を突き付けられたり、一方的な出入り禁止を言い渡されたりする事例をよく耳にする。こうした場合、ドライバーがその場で言い返してしまうと口論となり、トラブルが大きくなりがちだ。「運行管理者に確認します」など、あらかじめ決めておいたセリフでワンクッション置かせ、会社で対応する体制を整備しておくことが必要だ。
 ただ、荷主に対して従属的な地位に甘んじてきた中小零細の運送会社の多くが、毅然(きぜん)とした態度を取れない実態もある。あるトラック協会の会合では、若手経営者が「さまざまな法律や制度が変わって運送業界に追い風が吹いているのに、長年にわたって我慢することに慣れ、交渉のやり方が分からなくなっている」と発言していた。まさにその通りだろう。
 学校でのいじめをなくそうと、教員や保護者が決まりを作っても、いじめられっ子が我慢することに慣れたら事態は改善しない。本人が毅然とした態度で臨んでこそ、いじめもなくなってくる。
 改正物流効率化法で荷待ち・荷役時間の短縮が全ての荷主や運送事業者の努力義務とされたように、法律や制度面の環境は大きく改善されている。経営者や管理者はまず状況を客観的に見て、相手に落ち度のある部分をきちんと指摘し、毅然と改善を求めることだ。営業面に忖度(そんたく)して曖昧にすると、ドライバーが会社に失望して仕事へのプライドも失い、退職につながりかねない。会社にとって顧客は大事だが、社員を守ることも事業存続には欠かせない。(江藤和博)