【主張】氷河期世代の我慢に依存せず

取材で運賃が上がったか、ドライバーの給与を上げたかを尋ねると、厳しい回答が多い。運賃の上がり幅は10%に届かない。この根本的な原因を考えると、ストレス慣れした氷河期世代のドライバーの影響を感じる。
 会議の取材で「ドライバーは3年以上雇うな。給料が上がってしまう」という言葉を久しぶりに耳にした。かつての業界の悪い習慣を紹介する中での話だが、確かに20年以上前によく聞いた。懐かしさすら感じる。当時、3年程度で運送会社を渡り歩くドライバーを歓迎する空気もあった。今では考えられない話だ。
 厚生労働省によると、ドライバーの平均年齢は大型トラックで51歳。年齢構成で見れば50~54歳が全体の16・5%、55~59歳は15%、45~49歳は13・5%だ。40代後半から50代が45%と、半数近くを占めて高齢化が進む。
 この年齢層はまさに氷河期世代で、経済的に不遇な状況に置かれ続けてきた。バブル経済とITバブルの崩壊に翻弄(ほんろう)され、その後はリーマン・ショックで雇い止めが増加。ドライバーに限らず、多くの職業で賃金が下落したが、物価の低位安定で生活が落ち着いていた感がある。
 しかし、ドライバーの給与の下落は尋常ではなかった。振り返ると、社会全体がドライバーの給与をコストの調整弁にしていたように思う。労働時間で給与を割ると最低賃金すれすれ。「コンビニエンスストアでバイトをしたほうがまし」という愚痴も良く聞いた。コンビニはさまざまな業務対応があり誰でも働ける気はしないが、ドライバーよりは楽という気持ちがあった。
 運賃が上がらない原因を考えると、デフレマインドを引きずっていたり、運送会社の気合や工夫が不足したりしていることもあるが、氷河期世代のドライバーが離職しないのも一因だ。「コンビニバイトのほうが……」と言いながら「この仕事が好きだから」と働き続けるため、危機感を持ってもらえない。
 給与の低さから「退職した」という声を聞くが、荷主交渉で運送会社側が気迫を込めるには、離職者が足りない。氷河期世代の我慢強さへの依存から脱却し、本気で交渉しなければならない。(佐々木健)