今回の熊本地震が明らかにしたのは、九州の交通網のぜい弱さだ。福岡と鹿児島を結ぶ大動脈、九州自動車道がその中央で分断され、鹿児島は「陸の孤島」と化した。代替路や非常時のフェリー利用環境の整備を進めるべきだ。
鹿児島の運送事業者の多くは、定時性を優先しようと、宮崎、大分を経て福岡や本州に向かう東九州自動車道経由の広域う回を選んだ。その結果、通常より3時間以上、場所によっては4時間超も余計に時間を要した。
総延長430㌔の東九州道は、その9割が片側1車線。休憩施設も不足し、事故や故障が起こるたびに機能不全に陥る。九州道と並んで熊本と宮崎を結ぶ国道219号は、2020年7月の豪雨の復旧作業で代替路の機能を果たせなかった。
鹿児島、宮崎の両県の畜産出荷量は、ブロイラーが全国の4割、牛と豚はそれぞれ2割を占める。しかし、県外出荷は九州道に依存している。東九州道の4車線化と南九州西回り自動車道の整備により、九州の西、中央、東に3本の高速道路が完備されると、災害時の代替輸送網が各段に強化される。
本州との接続も重要だ。関門国道トンネルと関門橋の老朽化への対応は喫緊の課題だが、解決したとしてもまだ心もとない。福岡県が自動車、熊本県は半導体の生産拠点となっている。関門ルートだけでなく、大分県と愛媛県を結ぶ豊予海峡ルートが実現すると、サプライチェーン(供給網)は強固なものとなる。
海上輸送と連携した災害時の緊急輸送体制の整備も必要だ。鹿児島、宮崎発着のフェリーの輸送量には限りがあり、乗船枠を持っていない運送会社は多い。陸上の交通網が分断された今回のようなケースでは、被災地発着のトラックが乗船を確保できる仕組みも、供給網維持の観点から必要ではないか。う回に伴う高速道路料金の助成といった支援も求めたい。
九州では近年、地震に限らず、大雨や積雪による通行止めが多発している。九州の産業基盤と国土防災、安定供給の観点から、予算を確保して交通インフラを再構築すべきかどうか、議論してほしい。(上田慎二)