【主張】運送版ミシュランガイドを

ミシュランガイドの三つ星は「そのために旅行する価値のある卓越した料理」を出す店に与えられる。では「そのために値上げする価値のある卓越した運送サービス」を提供する事業者はどれほどあるだろうか。「適正原価」で一定の運賃が保証される一方「適正原価以上の料金を設定しにくくなる」と懸念する声もある。しかし、その会社にしかできないサービス、出せない品質があれば、高くても依頼する荷主はいるはずだ。適正原価施行後は、差異化と品質の高さがより重要になる。
 適正原価について協議する官民検討会が始まり、施行の時期も迫る。告示後の原価に基づく運賃以下の発注・受注が規制され、事業者が安全性や給与水準の向上に投資しやすくなることが期待される。
 ただ、これは「価格の低さで競争優位性を担保しにくくなる」ということでもある。これからは価格以外で他社と差異化する必要性が増す。
 適正原価はタクシーのように運賃が定められるわけではない。適正な経営を脅かすほどの買いたたきを防ぐための下限を設ける制度で、天井(上限)がないため、自由競争を阻害しない。「輸送品質が最高峰の事業者に、高い運賃を払ってでも運んでもらいたい」というケースも成立する。
 ミシュランで三つ星を取る店は高級店ばかりだが、人生を変えるほどの素晴らしい料理を求め、予約が殺到する。認定されるハードルは非常に高いものの、得られるメリットは絶大で、飲食業界全体の品質向上につながっている。
 これを参考に、運送版ミシュランガイドのような制度を創設してはどうか。Gマーク(安全性優良事業所認定)に星を付ける方法も考えられるが、取得しにくいほどの高いレベルが必要で、一般の人への周知も求められる。
 ただ、これだけでは大手の事業者ばかりが星を独占することも予想されるので、ミシュランのビブグルマンのような枠も取り入れればよい。価格以上の満足感が得られる店に与えられる称号で、高級な素材や大勢の料理人を使わずとも上質な料理を提供していれば認定される。品質の高さが一層重視されるよう、運送業界全体のアップデートが望まれる。(根来冬太)