【主張】新名神事故の原因を忘れるな

業界関係者としては意外だが、一般の人にとって、トラックドライバーの運転は危険という印象が少なからずあるようだ。デジタルタコグラフやドライブレコーダーで管理され、運行データが賃金にも反映される昨今。なぜ、いまだに悪いイメージを持たれるトラックドライバーがいるのか。
 広島県貨物自動車運送適正化事業実施機関によると、輸送相談窓口に市民から寄せられる苦情・相談の件数は年間40~50件で、2025年度は44件だった。多くが危険運転で、あおり運転と急な割り込みが目立ち、ながら運転も散見される。
 車間距離を詰めた後方からの接近、長時間に及ぶライトのパッシング、しつこいクラクション、幅寄せ、蛇行、急ブレーキ、携帯電話を操作しながらのふらつき走行、大声での威嚇など、プロのドライバーとしてあってはならない行為だ。当該ドライバーの所属会社が分かる場合、その代表者や運行管理者に苦情の内容を伝えると、ほとんどの会社が、指導や注意を行ったり、社内で共有したりするという。
 当該車両のドラレコの記録映像を確認すると、先に一般車両がトラックの走行を妨げ、腹を立てたトラックドライバーが仕返しのように危険運転に至るケースも珍しくないという。自ら行うことは言わずもがなだが、他の車に挑発されたからだとしても、模範となる運転をすべき立場として容認できることではない。大半のトラックドライバーは、当たり前のように安全運転に徹している。
 同適正化機関では、広島県トラック協会会員事業者のドライバーが運転する大型トラックが、3月20日に新名神高速道路上で6人を死亡させた多重追突事故を受け、危険運転防止対策事業を企画。のぼり旗を作製するとともに、広島運輸支局や広島県警と連携した街頭キャンペーンなどを計画している。
 大半が模範的な運転をしていても、危険行為をするドライバーがいればイメージは良くならない。事故を起こせばなおさらだ。新名神で6人の尊い命を奪った悲惨な事故の原因が、スマートフォンを操作しながらの危険運転であったことを決して忘れてはならない。(矢野孝明)