街で白いボディーに「EV」と書かれたヤマト運輸の小型トラックを見かけることが増えた。かつて主流だったウォークスルー車と違い、静かに滑るように走る姿はどこかすがすがしく、街の景観にもなじむ。排気ガスを出さず、騒音が少ないという一般の消費者の高い評価がなされているのもうなずける。
ヤマト運輸は4300台のEV(電気自動車)を導入し、ラストマイル配送の脱炭素化を進めている。2030年には配送車両の60%に当たる2万5千台を置き換える計画。環境負荷を減らすサステナブル物流を企業戦略に据える。
しかし、導入には大きな壁がある。補助金があるとはいえ、車両価格は依然として高く、収益を圧迫する。多くの事業者が、今の利益水準では余裕がないと考えるのは当然だ。「大手だからできることで、中小には無理」という声が出るのも分かる。
では、なぜヤマトは積極的にEV化を進めるのか。背景には、荷主企業が物流の脱炭素化を求めている事情がある。環境負荷の低い配送を提供できなければ、委託先に選ばれない。また、機関投資家は投資判断にESG(環境・社会・企業統治)を重視しており、EV導入は株価の安定や資金調達コストの低下につながる。こうした圧力とメリットが、大手のEV化を後押ししている。
宅配便の大手事業者だけでなく、一般の事業者でも、荷主企業の環境負荷低減の要求が強まれば、EVの導入が進むと考えられる。EV導入は「余裕がある企業の選択」ではなく、「取引継続の条件」へと変わる可能性が高くなる。