政府備蓄米の緊急放出を巡る物流を含めた影響は、収まる気配がない。供給量が増えてコメの価格が下がる中、国は2025年産備蓄米の買い戻しを表明。保管スペースが空いたままの倉庫会社からすれば、歓迎すべき話だ。だが、既に転用して別の貨物に充て、21万㌧分の収容能力が失われているとの調査結果が出ており、将来的に備蓄米の保管先がなくなる懸念がある。長期的視点で、サプライチェーン(供給網)全体を踏まえた制度設計の重要性が増している。
1日、鈴木憲和農林水産相は21万㌧を買い戻す方針を示した。供給量が十分に確保できていると判断してのことだが、経営圧迫を訴える生産者からの声も要因となった。
備蓄米を扱う倉庫会社は、緊急放出で本来収受すべき保管料の補てんは決まったものの、空になった倉庫をそのままにはできないため、早期の買い戻しを求めていた。
緊急放出では、全国の供給網に混乱を来した。今回の買い戻しで、生産者や倉庫会社の要望はかなった形だが、今後の備蓄米制度の運用がスムーズにいくかは不透明だ。
他の用途へ活用している倉庫があり、安定的な貨物の保管にシフトする動きが鮮明になった。適正水準の100万㌧に向け、国は計画的に回復を図る方針だが、この状態では保管場所が足りなくなる。
そもそも、保管料金水準の低さなどから備蓄米保管を手がける倉庫会社は減少傾向にある。生産者の減少も大きな課題だが、倉庫の確保も同様に重要だ。まずは、保管能力不足などの実態について、改めて関係者で認識を一つにし、議論していく必要がある。
国も、安定した制度運用に向け、集荷業者や卸売会社に保管させる「民間備蓄」を始めるが、取り組みに疑問を示す声が少なくない。そうした意見を反映させながら、実証を重ねることが求められる。
長い目でみても、食料安全保障の観点で備蓄米の安定保管に対する重要性は変わらない。25年はコメの値上がりで消費者が打撃を受け、今年は反対に生産者が悲鳴を上げる。物流の観点も忘れず、全体が納得できる制度を整える必要がある。倉庫会社からも、解決に向けて声をもっと上げてほしい。(土屋太朗)