ロシアとの戦争が長期化しているウクライナでは、ドローンが収集する「戦場データ」に注目が集まっている。実戦で収集した映像をAI(人工知能)開発に活用するのを目的に設立されたウクライナ政府主導の防衛技術プラットフォームには、100社以上のスタートアップが参画するとともに英国もアクセスしており、協力して防衛技術を強化しようとしている。
こうしたデータが注目される背景には、その環境でしか得られない情報の希少性がある。平時の実験場では、妨害電波や悪天候、煙、予測不能な敵の行動といった「例外」の再現は難しい。一方でAIの性能を左右するのは、まれなケースへの対応力。戦場は悲劇的な場所である一方、蓄積されるデータは、自律飛行を目的としたAI開発においては他では得られない情報を含む。
見方を変えると、戦場データは戦時下の国家の新たな資産になり得る。データへのアクセス権や、それを用いた共同開発により、兵器を輸出しなくても知見そのものが経済的価値を生み出す。
戦争へのAI活用は、たびたび倫理的な議論を引き起こす。また、これらのデータを取引する場合、誰が管理するのかも悩ましい。軍事機密、兵士や民間人のプライバシー、敵味方の識別情報、さらにはAI兵器の高度化といった複雑な要素を含むデータを管轄する機関やルールは存在しない。また、国境を越えたデータを誰が所有し、誰に、どこまで利用させるのか。戦場データが注目を浴びる陰で、倫理やガバナンスの問題が顕在化しつつある。