【主張】最新技術、安全管理へ活用を

交通事故防止をはじめとする安全管理は、運送事業者の使命であり最大の課題と言ってよい。自動運転といった最新技術が日進月歩であるとはいえ、トラックの運行は依然として人の手に委ねられている。そうした意味で、運行管理は人の管理そのものと考えることもできる。
 事故防止など安全管理の分野で、ITの応用やDX(デジタルトランスフォーメーション)も進みつつある。運行中の車両の車線維持や動態管理はもちろん、運転中のドライバーの目の動きから疲労や眠気の度合いを検知して警告を与える技術や、死角の危険を感知するセンサーなどさまざまな技術が開発され、事故の未然防止に大いに役立っている。
 一方で、交通安全をテーマにした研修会や会議、運送会社の運行管理を取材していて、よく聞かれるのは「始業点呼を終えて出庫した後は、ドライバーの安全管理をリアルタイムに効率的、効果的に行うのは難しい」などの声だ。点呼時のアルコールチェック、ドライブレコーダーによる監視の目をくぐり抜け、飲酒状態で運転したドライバーが重大事故を起こしたケースも、残念ながらまだ根絶されるには至っていない。
 「人間の心理まで管理することはできない」「ドライバーの監視には限界がある」といった声も、運行管理の現場ではよく耳にする。運行中の状態を記録し、事故原因の究明に役立てるドラレコで、事故の芽を摘むことはできない。
 では、それが現在のテクノロジーの限界なのだろうか。記録された無数の事故の映像やデータを基に、事故を起こすドライバーの性格や運転のクセをAI(人工知能)で分析するなどして、効果的な従業員教育や啓発の手法を探り、安全管理に生かすこともできるのではないか。
 ホンダの創業者、本田宗一郎氏は「技術は人のためにある」と言ったとされている。発展の目覚ましいITやAIといった最新のテクノロジー、DXの進展は、運送の現場における効率の追求だけにとどまらずに、人々や社会の安全と安心のためにこそ、活用されるべきだろう。
(小菓史和)