【主張】「物流庁」創設を提起する

「物流危機」のフレーズが声高に叫ばれるのと比例して、物流の社会的な位置付けは日に日に高まっている。記者として物流に携わるようになった2000年代後半までは、ほぼ経済性の観点でのみしか物流の課題は取り上げられていなかった。だが、いまや社会問題の縮図といった文脈で語られる。
 その転換点といえるのが、11年3月に発生した東日本大震災。物流が重要な社会インフラの一つであることが意識されるようになった。さらには、20年からの新型コロナウイルス禍によって、トラックドライバーをはじめとした物流従事者が「エッセンシャルワーカー」として明確に位置付けられた。
 こうした中、24年4月からのドライバーへの時間外労働上限規制の適用を前にした「2024年問題」への危機感によって、物流に対する意識・重要性が官民ともに大転換した。政策面では「新物流2法」「トラック適正化2法」「中小受託取引適正化法」といった構造改革につながる法改正が相次いで行われ、荷主の違反原因行為を対象とした「トラック・物流Gメン」が創設された。
 また、所管の国土交通省に加え、経済産業、農林水産、厚生労働の各省なども物流の政策立案・執行に関与するようになった。
 話はそれるが、11月に防災庁が発足する。南海トラフ地震や首都直下型地震など国難級の災害の発生が切迫する中、平時から復旧・復興まで一貫した司令塔を担う。災害対策基本法に基づき、内閣に設置される行政機関で、組織としては府省と同列の扱いだ。
 特定の分野を専門的に扱う「庁」は、公害問題の高まりを受けて誕生した「環境庁(現環境省)」、東日本大震災の発生をきっかけに発足した「復興庁」、デジタル社会の進展に対応した「デジタル庁」など、時代の変化や要請を受けて設置されてきた。
 そこで、関係行政の縦割りを解消し、政策の司令塔とするため「物流庁」の創設を提起したい。物流が国家の重要政策の一つに位置付けられるまでになった今、荒唐無稽な構想とは言い切れないのではないか。(田中信也)