2カ月前まで住んでいた部屋からは、あるものが見えた。食肉処理場だ。人生で偶然、食肉処理場周辺の物件を2度紹介された。
皮肉にも別の街に引っ越した半月後に、工場見学の機会をもらった。ブルーカラーの労働問題と向き合うには、政治や経済はもちろん、歴史、差別、格差、労働災害、人口動態、公害など、多角的な視点と学習を要すると改めて感じる。
並行して1年ほど取材してきたのが紙媒体。木材チップでできた紙が、書籍となって消費者に届くまでを追った。紙がトラックに載る回数は、最低10回。自著の重みをより感じるようになった。
運送業界という「横のつながり」が重要なのを前提に、さまざまな現場を知るたび、「縦のつながり」で何らかの基準や比準を設ける必要性を感じる。同じ運送事業とはいえ、生体輸送と製紙輸送はもはや異業種だ。荷物も荷主も違う中、「運送」というくくりのみで同じルールや法で縛ると、運送会社はおろか産業そのものがつぶれる恐れがある。
先日、日本新聞協会(中村史郎会長)など紙媒体の複数団体が、「適正原価」制度に対し、一定の猶予、または段階的な導入を求める要望書を木原稔官房長官、井林辰憲国土交通相に提出した。紙媒体にぶら下がる身として感じる業界の衰退。彼らは自社の記者や編集者たちだけでなく、その裾野に広がる印刷企業や取り次ぎ、書店を守る責任もある。
自分の原稿料交渉よりおっくうだが、均衡点を見つけねばという思いの方が強い。運送側の声を届けつつ、紙業界団体の見解を聞く予定だ。