行政書士以外が報酬を得て官公署に提出する書類を作成する違法行為について、禁止規定がより明確化されたことで、一部の業界団体などの行っている業務が違反とならないか、関係者に不安が広がっている。会費、手数料、コンサルタント料などの名目でも報酬と見なされる恐れがある。(特別取材班)
官公署に提出する書類を作成するのは、行政書士の独占業務(他の法律で制限されるものを除く)。しかし、直接には請求せず、諸経費に上乗せするなどさまざまな方法で料金を得ながら、行政書士でない人が書類を作成するケースが散見されていた。
そういった法の抜け道をふさぐため、1月に行政書士法の一部を改正する法律が施行された。特に注意が必要なのは、非行政書士による違法行為の禁止規定に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加された点。違反した人と法人は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される恐れがある。
物流業界でも、増減車、車庫証明、自動車登録、補助金関連の申請などを業界団体や自動車ディーラー、コンサルタント会社が別名目で報酬を得て行っているケースが指摘されている。
日本行政書士連合会(宮本重則会長)は、改正法の成立に当たり発表した会長談話(当時は常住豊会長)で「『報酬を得て』とは、書類作成という役務の提供に対する対価の支払いを受けることで、この改正により『会費』などのいかなる名目であっても報酬に該当する」としている。
あるトラック協会ではほぼ全ての会員に対して、増車や営業所新設といった各種書類の作成と届け出を恒常的に代行。同協会の職員は「会員の『手伝い』と位置付けているが、会費が報酬に該当するならば前渡し金と受け取られかねない」と懸念する。役所への届け出については「『別の用があったからついでに持ってきただけ』と言い逃れるしかないが、それも難しいだろう」と打ち明ける。
別のトラック協会の支部でも、長年にわたって増減車などの書類作成と届け出を代行。行政書士法の改正に伴いサービス廃止の議論はあったものの、結論は出ていない。
同支部の理事は「限りなく黒に近いグレーなのは理解しているが、書類作成の代行は支部の『売り』の一つだ。大幅な会員減を招く恐れもあり、おいそれとは廃止できない」と話す。
ただ、これまで業界団体などが行ってきたサービスは実務に絡むもので「運送業界を理解している行政書士がどれほどいるのか」と疑問視する声もある。会員サービスとして長年手がけてきた業務の全てを転換できるほど、行政書士が充足していない懸念は残る。
行政書士法人運輸交通法務センター(大阪市北区)の楠本浩一代表は「書き方を教えるなど相談の範囲であれば、行政書士以外が行っても問題ないが、作成してしまうと違法になる恐れがある。また、運輸局に書類を提出し、間違いなどが見つかった場合、行政書士以外が代理で書き直すことも避けなければならない」とし「車庫証明の書類作成などを行っていたディーラーも、行政書士に任せるよう変わってきている」と説明する。
あるトラ協では、行政書士からの案内や指導を受け、10年以上前から作成に必要なアドバイスをするのにとどめ、記入は会員が行うようにした。一方、届け出に関しては、郵送は不可で運輸支局まで足を運ばなければならないことから、複数の会員の書類をまとめて協会職員が持参している。
内部告発で違反が発覚する恐れもあるため、法改正の影響を軽視すべきではない。業界団体などは書類作成の助言、支援までにとどめ、法令を順守した会員サービスが求められる。また、業界団体が複数の行政書士と連携したり、行政書士会が業界ごとの実務に即した書類作成の方法を研修したりといった取り組みも必要になってきそうだ。