用途が広い石油化学品の物流もナフサ(粗製ガソリン)不足で影響を受けている。石油化学コンビナートを擁する三重県四日市市で、サプライチェーン(供給網)を担う物流事業者と元請企業は口をそろえ「今後の先行きが全く見えなくなってきた」と不安を隠さない。
他社との3社協業で化学品物流のサードパーティ―・ロジスティクス(3PL)事業を手がける、新成運輸(三重県四日市市)の村木尚哉社長は「当社では自家用給油所へのインタンク価格が外部フリート購入より高くなる『珍現象』が起こるほど燃料価格の高騰は深刻。このままでは仮に燃料があっても、事業が成り立たなくなる」と心配する。
新成運輸は2023年7月、本社近くの自社倉庫群で、ローリー輸送が主力の物流企業ちゅうえき(伊勢将社長、名古屋市港区)、物流加工事業者の四日市創和(松山豊社長、横浜市中区)と協業し、化学品物流のワンストップサービスを行う「ケミカルステーション」を立ち上げ、危険物倉庫の増床など設備投資を進めてきた。
四日市創和は大手日用品メーカーのグループ会社を顧客に持ち、洗剤やシャンプーの原材料となる界面活性剤などの詰め替え、充てん作業を担当する。新成運輸にとっては、元請企業で荷主にも相当する。
四日市創和の親会社、創和(同区)の松山諭社長は「界面活性剤は石油由来のナフサから作られるが、緊迫するイラン情勢でナフサの供給量が顕著に絞られてきている」と証言する。原油から精製される石油製品は、軽油、ガソリン、重油などの燃料になるものと、ナフサからエチレン、プロピレンなどの基礎製品に変わるものとで大きく二つに分かれる。
この基礎製品を素材として、生活に身近なプラスチック、合成ゴム、界面活性剤を含む合成洗剤、塗料などが作られる。松山諭氏は「燃料を確保するためだと思うが、原油から精製される石油製品の割合が、ナフサから燃料関係にシフトしているように見える」と話す。村木氏は「燃料確保は非常にありがたいが、ナフサ不足から仕事が減っても困る。痛しかゆしだ」と苦笑する。
政府は国家備蓄原油の追加放出を決め、ナフサも国内需要の半年分は確保できたと説明するが、松山諭氏は「この先どうなるかは分からない。塗料に使われるシンナーもナフサ由来で、品不足が深刻だ。自動車産業だと、部品を組み上げて車体が完成しても、塗装が終わらない限り出荷はできない。そんな事態もあり得るのでは」と推察する。
四日市創和では、緩衝材や断熱材など幅広い用途で使われるポリウレタンも扱っている。松山豊社長は「近年、国内のサプライヤーが激減したことに加え、ナフサ不足もあってポリウレタンは中国や東南アジアからの輸入が急増している。しかし、昨今の国際情勢を考えると、中国に依存しすぎるのも危険ではないか」と指摘する。
イラン情勢のしわ寄せは、サプライチェーン全体へと拡大している。化学品物流で中小事業者が緊密に連携し、大手企業に負けないサービスを目指す「ケミカルステーション」も、影響の長期化は死活問題だ。
村木氏は「ストックポイントを持ち、荷姿も変えられることで、新たな顧客ニーズを取り込もうと頑張ってきた。一日も早く事態が鎮静化することを願っている」と話している。(星野誠)